EURATOM欧州原子力共同体の条約を改正する約束を実現するように求める公開状

私たちSayonara Nukes Berlinは、EURATOM欧州原子力共同体の条約を改正する約束を実現するように求める公開状に賛同署名しました。

公開状ドイツ語原文:
Offener Brief Euratom PDF

(以下はSNBの有志による和訳です)

2020年7月1日からドイツはEU議長国となる。この公開状に署名した機関・グループはドイツ連邦共和国政府が議長となる機会を利用してEURATOM条約の改正を進める具体的な計画を取りまとめることをドイツ政府に求めるものである。

すでに2018年の連立政権合意書でCDU/CSUとSPDはEURATOM条約を「原子力エネルギー利用を将来の挑戦内容に合わせて調整するべきだ」と合意している。さらにこの連立政権合意書の中で将来「新しい原発建設に対しEUからは補助金は与えられるべきではない」としている。私たちはこの連立政権合意書におけるこの合意内容が不十分であることをここに表明するとともに、ドイツ政府に対しEU内で一刻も早く脱原発を実現すべく尽力することをここに求める。ドイツ政府からは少なくとも連立政権合意書の中で約束されているEURATOM条約の改正をEU理事会の議長国である間の最重要課題として推進することを期待する。

EURATOM条約はEU加盟国のエネルギー生産構造のエコロジカルな改革を妨げており、パリ協定の目標に真っ向から対立している。欧州原子力共同体の条約の前書きですでに、「強力な原子力産業を開発していく前提を作るものである」とはっきり目標を掲げており、原子力エネルギーを「経済の発展と活性化および平和の進展の基として欠かせないものである」と明言している。最近ではオーストリアがイギリスのヒンクリーポイント原子炉建設の大掛かりな補助金に対し訴訟を起こしたが、それに対し欧州司法裁判所では「国家による補助に対する規定もEURATOM条約のどちらも、技術的革新を求めるものではない」、従って新しい原発建設に対し国家が補助金を出すということは基本的に欧州条約と両立し得る」とされた。

欧州司法裁判所のヒンクリーポイント新原発計画に関する判決で、EURATOM条約の一義的な方針が確認されたことになる。欧州司法裁判所のプレスリリースでは「核エネルギーの推進の目的、ことに核エネルギー生産の新しいキャパシティを作り出すことに対するインセンティブ作成の目的は、核エネルギー分野の投資を容易にするというEURATOMの目標をカバーする…」と言及している。この判決があったからには、ドイツ連邦政府は行動起こし、EURATOM条約の改正をEU委員会で提案し、審議を他のEU加盟国にも求めていかなければならない。

「ドイツはヨーロッパにおける原子炉安全性においても、国内で脱原発したあとも持続して影響力を及ぼし続けるべきだ」と謳っている連立政権合意書の要求事項は、具体的な脱原発要求と結びつかなければならない。だから「包括的な安全性チェック」と「EUにおける勇気ある拘束力ある安全性目標」を求める要求も重要であるが、EU加盟国の全原発および核施設の即刻の停止を求める明確な要求へとつなげられていくべきである。

2020年後半にドイツがEU議長国を務める間に求める内容

・EU内での原子力推進を終了するため、EURATOM条約の撤回または契約変更に関する具体的な提案をする

・6か月内に上記の撤回または改正を実現するための契約委員会を招集すること

・Euratomの安全指針2014/87をさらに強化し、新しい原発(2020年かそれ以降に操業開始されるもの)が将来、現在の原発の安全基準を満たさなければならない(EPR欧州加圧水型炉など)ようにすること -これまでの30年前の原発建設が始められた当時のものの代わりに -

さらにドイツ政府に対し以下のことを要求する:

・EU内の全原発の即刻停止をアクティブに求めていくこと

・EU条約に、EU加盟国内での新原発建設を禁止する新条項記載を求めていくこと

署名団体・者 >

Deutschland:
.ausgestrahlt
Aachener Aktionsbündnis gegen Atomenergie
Aktionsbündnis Münsterland gegen Atomanlagen
Anti Atom Berlin
AntiAtomBonn
Anti-Atom-Bündnis Berlin Potsdam
Anti-Atom-Initiative Karlsruhe
Anti Atom Koordination Berlin
Antiatomplenumkoeln
Arbeitsgemeinschaft Schacht KONRAD e.V.
Arbeitskreis gegen Atomanlagen Frankfurt am Main
Arbeitskreis Umwelt (AKU) Gronau
Bayern Allianz für Atomausstieg und Klimaschutz
BISS e.V.
Brokdorf akut
BüfA Regensburg
Bund für Umwelt und Naturschutz Deutschland (BUND)
Bundesverband Bürgerinitiativen Umweltschutz (BBU)
Bündnis AgiEL
Bürgerinitiative Umweltschutz Lüchow-Dannenberg
Elternverein Restrisiko Emsland e.V.
EWS Elektrizitätswerke Schönau eG
Greenpeace Energy eG
IPPNW Deutschland
Mütter gegen Atomkraft e.V.
NaturFreunde Deutschlands
Natur- und Umweltschutzverein Gronau (NUG)
Sayonara Nukes Berlin
Sofortiger Atomausstieg Münster
Stop Tihange Deutschland e.V.
Umweltinstitut München e.V.
urgewald
Wolfenbütteler Atom(undKohle)AusstiegsGruppe

 

Bulgarien:
Naturfreunde Bulgarien

Dänemark:
NOAH Friends of the Earth Denmark

Finnland:
Women Against Nuclear Power

Frankreich:
Réaction en chaîne humaine

Österreich:
atomstopp_atomkraftfrei leben!
GLOBAL 2000 – Friends of the Earth Austria
Mütter gegen Atomgefahr
Salzburger Plattform gegen Atomgefahren (PLAGE)
Wiener Plattform Atomkraftfrei

Polen:
Wspólna Ziemia‘ / Association ‚Common Earth‘

Schweiz:
SES Energiestiftung

Spanien:
Ecologistas en Acción
Grup de Científics I Tècnics per un Futur No Nuclear
Movimiento Iberico Antinuclear
Stop Uranio

länderübergreifend:
Don´t nuke the climate campaign
Friends of the Earth Europe
Nuclear Consulting Group

 

フクシマでの聖火リレー開始に向けて、IPPNWドイツ支部、ausgestrahlt、SNBの共同プレスリリース

2020年3月24日午前11時ににIPPNWドイツ支部とausgestrahltとSNBは以下のプレスリリースを共同で公表した。つまり、2020年夏に開催予定の東京オリンピックが1年延期されることが公表される前のことである。当初の計画では、このプレスリリースで批判されている聖火リレーが3月26日の木曜に、事故を起こした福島第一原子力発電所から遠くないJビレッジでスタートされる予定になっていた。

オリンピックの延期に伴い、私たちは引き続き1年間このテーマと取り組んでいかなければならない。2020年東京オリンピックは(まだアンダーコントロールでない)フクシマのためではなく、コロナウィルスのために延期になったからだ。

 

Pressemitteilung von IPPNW, ausgestrahlt und Sayonara Nukes Berlin
Olympia-Show in der Fukushima-Sperrzone
Kritik am Start des Olympischen Fackeltransports am 26. März

https://www.ippnw.de/presse/artikel/de/olympia-show-in-der-fukushima-sperrz.html

2020年3月7日(土)フクシマ9周年かざぐるまデモ@ベルリン

去年亡くなられた木内みどりさんから送呈していただいた横断幕 撮影:Bernd Frieboese

天気予報では雨だったが、デモの間、雨は降らないでいてくれたのが救いだった。それでも嵐のような風で、舞台のパヴィリオンの屋根がブランデンブルク門の吹き抜けの風にあおられてひっくり返るかと思われるほどだった。かざぐるまがくるくると回り過ぎ…横断幕が風に吹き飛ばされそう…ダンス舞台を区切るための三角コーンも倒された…などと風によるハプニングはあったものの、無事今年もかざぐるまデモを終えることができた。

ブランデンブルグ門を背に 撮影:Rokko

デモの集合場所がパリ広場ではなくて反対側になっていたり、デモルートが最初の予定とは違っていたりというハプニングもあったが、雨模様という天気予報、そしてコロナウィルスのため人の出が悪くなっているにもかかわらず、集まってくれた人たちが今年もたくさんいたことを嬉しく思う。そして雰囲気はとてもよかった。いろいろなことはこれまでにもあったが、それでも何年も一緒にデモをしてきて、その信頼感が出来上がっていることを、NaturfreundeのUwe Hiksch(司会担当)や、Greenpeace EnergyのChristophや、IPPNW GermanyのAlex Rosenなどと話をしていて実感でき、そのことが実績なのだと感じた。また、数日前に緑の党の議員Sylvia Kotting-Uhl氏が演説をキャンセルしてきたり、ICANの人は来なかったのだが、この日の演説者の内容は濃く、それでいて長すぎなくて、寒い風の中を立っている人が震えすぎずに済んだのも、後から見ればよかったと思う。

津軽三味線・川口汐美さん 撮影:Bernd Frieboese

まずは津軽三味線の川口汐美さんの演奏とTsukiさんのダンスから始まった。寒くて、しかも風が吹きとおす舞台で、汐美さんもTsukiさんもよく力を出してくれた。津軽三味線の音は迫力があり、たくさんの人に印象深く映ったようで、あれは何という楽器なの?という質問をいくつも受けた。

ダンスのTsukiさん 撮影:Bernd Frieboese

Tsukiさんは羽衣を感じさせる布を使った踊りで、風が強かったことがかえって良かったかもしれない。こうした機会に恵まれたことをとても喜んでくれた。二人に気持ちよく引き受けていただいて今年もライブ音楽のあるデモが行われたことに感謝したい。

NaturfreundeのUwe Hiksch 撮影:Rokko
ゆうの演説 撮影:Bernd Frieboese

その後に挨拶と演説が二人続いた。司会のUweから挨拶とともに、フクシマはまだ収束していない、そしてことに昨今、気候温暖化で二酸化炭素排出を減らすために原子力エネルギーの見直しを迫る声などが上がり始めた今、原子力エネルギーは気候温暖化を救うものではない、と訴えることの重要さ、それから今も変わらず核武装の恐怖があり、ドイツは脱原発を決定し、動き出したものの、変わらずウラン濃縮や燃料棒製造工場が操業している、EURATOMは相変わらず存在する、などに言及した話によるデモ開始宣言があった後、このかざぐるまデモを毎年企画し、参加団体を呼び掛けるSayonara Nukes Berlin(SNB)を代表して私のことが紹介された。私は日本人の一人として、とにかくフクシマの現状を伝え、収束などしていないのにあたかもすべてが復興して元通りになったかのような錯覚を世界に与えようとする場としてオリンピックを悪用しようとしている政府を批判する話をした。内容的には武藤類子さんからのメッセージにも言及された内容に沿ったものにした。

Sayonara Nukes Berlinを代表してゆうの演説(日独):

2020年3月7日かざぐるまデモ Sayonara Nukes Berlin 演説和訳

Sayonara Nukes Berlin Rede für die Kazaguruma-Demo am 7. März 2020
武藤類子さん
今年も、福島第一原子力発電所の事故による被害者で、福島原発告訴団の団長である武藤類子さんからメッセージが届いたので、ドイツ語と英語に翻訳したものを配布することができた。英訳は、英国在住の日本人を中心に活動する反原発団体JAN UKの有志によるもの。

武藤類子さんのメッセージ(日独英): 
武藤類子さんのメッセージ 2020 日本語
Botschaft von Frau Ruiko Muto 2020 Deutsch
Message from Ruiko Muto 2020 English 
IPPNWのAlex Rosen 撮影:Bernd Frieboese

次に緑の党のSylvia Kotting-Uhl氏が演説予定だったが、キャンセルとなったため、IPPNWのドイツ支部代表Alex Rosen氏が医者の立場から話をしてくれた。彼は原稿を持たずに演説したので私の記憶だけで心に留まったことを書き留めたい。チェルノブイリではソ連はあらゆる過ちを犯したのは確かだが、それでもただ一つこのことは彼らも認めて実行した。つまり、放射線被害の高いところは、除染などはできないため、そこには住民はこれからそこに住まわせることは何百年先までできない、ということである。そこでソ連は、線量の高い場所の住民を別の場所に避難させた。日本は、そのことを認めようとしない。除染ということが可能であるということにして、多大な費用をエネルギーと時間をつぎ込んで、除染を行ってきた。そもそもはそこが問題である。山や森などは除染は不可能だし、土をそぎ取ってもその土をどこに隔離して保管するかということもしっかり行われていない。「除染」しても、一度雨が降ったり風が吹けば、山や森からすぐに放射能が吹き飛んでくるので、無意味だ。ことに、聖火リレーをJヴィレッジで始めたいためもあり、双葉の一部で今避難解除が行われたが、ここではGreenpeaceが線量の高いホットスポットをたくさん見つけており、それを指摘してまた除染しても、1メートル離れたところでは高い線量がまた見つかる、というもぐら叩きのような感じである。そういう場所に子どもたちを応援に連れていく、または若い選手を連れてきてリレーさせる、ということが非常に問題である。それから、ゆうの演説で一つだけ反論したいのは、FUKUSHIMA is under controlと安倍首相が言ったのは、彼の目からすれば「フクシマは政府を含めた原子力村によって見事に制御、抑制されている」という意味においては正しい、ということだ。彼らは今でもうまく「コントロール」している。それを変えていかなければならない、というようなことをAlex Rosenは明快に話してくれた。

撮影:Uwe Hiksch

それからデモ行進に移った。大体150人ほどだったと思うが、それでもかざぐるまを手にした人たち、数々の横断幕をもった人たちでベルリンの中心街の通りが埋まった。コロナウィルスの影響で観光客が少ないのが目に立った。いつもなら観光客で賑わう土曜日のベルリン中心街で、こんなに人が少ないのは初めてだ、というくらい人が少なかった。それでも私たちのデモを見て写真を撮る人、声をかける人たちも数々いた。

AntiAtomPlenumの演説者 撮影:Rokko

ブランデンブルク門前まで戻り、また汐美さんによる演奏で皆が集まってから、次の演説に移った。ICANの演説者は残念ながら現れなかったので、AntiAtomPlenumの女性の演説から始まった。彼女はことに放射性廃棄物の問題を取り上げ、ことに今年の2月にまた使用済核燃料乾式キャスク(ドイツではCastorと呼ばれる)がイギリスの再処理工場セラフィールドから送り返されて3月1日にヘッセン州のBiblis中間貯蔵施設に運ばれることになっていることを語った。よく知られている通り、ドイツではGorlebenなどのグループが中心となってかねてよりこのキャスク輸送の抵抗運動があり、デモ隊が線路に鎖で自分を繋げたり、道路に横たわったりする反対運動が繰り広げられてきた。2015年に連邦政府が電気会社との話し合いで決定して以来、このキャスクの行き場はGorlebenではなくBiblisになっている。これから運ばれるキャスクは21もあるようだが、これらはBiblis、Philippsburg、IsarそしてBrokdorfのいわゆる中間貯蔵施設に分けられて貯蔵されることになる。このキャスク輸送の反対運動というのは、この恐ろしい放射性廃棄物のキャスクを輸送するということは危険であるだけでなく、そうした危険な放射性廃棄物を「作らないようにする」ことには一切努力せず、それを処分する場所もないのに「中間貯蔵」という体裁で安全とは言えない貯蔵をしようとするために大変なお金をかけ、リスクを冒すことをたくさんの人に知ってもらうため、そうした政府の原子力エネルギーに対する態度を批判するために行ってきているものだ。そしてこの輸送は、「安全確保の理由」のために前もってどこをいつどのルートを通って輸送されるかは、知らされない。それで、この抵抗運動に興味のある人には、情報を伝えるためのメールリストに参加したり、またはSMSで事前に運動情報を伝えるために携帯番号を教えるシステムがあるので、https://castor-stoppen.de/を読んでほしいと伝えていた。

それから最後に演説をしたのは、2016年のProtestival以来、ずっとデモに参加してくれているGreenpeace EnergyのChristoph Raschである。演説の全文をここに掲載する。

Greenpeace EnergyのChristoph Raschの演説(日独):

2020年3月7日かざぐるまデモ Greenpeace Energy 演説和訳

Greenpeace Energy Rede auf der Kazaguruma-Demo am 7. März 2020
最後に記念撮影 撮影:Uwe Hiksch

Uweの提案で、初めてだが参加者全員がブランデンブルク門前に並んで写真を撮った。Uweがその夕方さっそくFlickerに載せた写真をここにも掲示する。

かざぐるまが威勢よく回った9周年目のかざぐるまデモ。コロナウィルスの関係で日本でもフクシマ追悼行事が中止になったり、小規模な集まりに縮小されたりしていると聞くが、それでもベルリンで今年もデモを成功させ、私たちの意思表示をしたことを喜びたい。コロナ蔓延の危機マネージメントを見ても、本当に被害者を少なくするため、人々を守るためよりは、なるべく数を少なくしたい(だから検査しない)、自分たちのコントロール下に置きたい(だから民間業者に依頼しない)政府のあり方が目立ち、フクシマの時と変わらない、と腹が立つ。これだけいろいろ自粛し、禁止・中止にしていて、それでどうして夏にオリンピックをしようというのか、と思うが、これから事態は変わる可能性もある。また、新型インフル特措法改定や緊急事態宣言が発令されるなどの危険性も出てきた。これからもよくよく注意して日本を見守り、声を上げていかなければならない。残念ながら、気の休まるゆとりがないのが今の日本であり、世界である。(ゆう)

Greenpeace Energy が3月11日を迎える前に発表した動画:

関連記事:

SNBを代表して、ゆうのインタビュー記事が3月11日にターゲシュピーゲル紙のウェブサイトに掲載された。紙面では9日発刊。

Fukushima ist noch lange nicht Geschichte https://www.tagesspiegel.de/sport/olympische-spiele-in-japan-fukushima-ist-noch-lange-nicht-geschichte/25621924.html

 

 

かざぐるまワークショップ2020

 

今年もまたInterkulturelles Haus Schönebergにて、参加者のみなさんと一緒に、3月7日の土曜日に行われるかざぐるまデモで配るおよそ300本のかざぐるまを作りました。

かざぐるま作りのベテランの参加者たちが、新たな参加者たちに作り方を教えながら、慣れた手つきで花火の棒に針金を巻き付けます。かざぐるまは、Sayonara Nukes Berlin(SNB)のメンバーが新年に拾い集めた花火の棒をきれいにして、木のビーズと紙のテープを使って作られています。

作業も早く、いちばん熱心に作ってくれたのは、手先の器用な子どもたちかもしれません。昨年と同様、素敵な模様のついたかざぐるまの型紙のデザインは、みどりさんによるものです。

カフェスペースで和む参加者たち。いつの間にか、数学の先生が数字を使った手品(?)を披露していました。

 

 

今年はヴェーガン用のマフィンも登場、イチゴのロールケーキや抹茶のベイクドチーズケーキがなかなかの売れっ子でした。SNBのメンバーが持ち寄ったお菓子や飲み物への寄付の

収益は、67,9ユーロとなりました。この寄付金は、私たちの活動のため、大切に活用させていただきます。みなさんのおかげで、今年も朗らかに楽しくかざぐるまを作ることができました。ありがとうございました。

風を受けると、かざぐるまを持つ手のひらに、再生可能エネルギーの確かな手応えを感じます。3月7日のかざぐるまデモで、みなさんにお目にかかります。

詳細は、kazagurumademo.deで。

NEWS:3月7日はフクシマ原発事故9周年 かざぐるまデモ

2020年3月7日(土) 12時
ベルリン・ブランデンブルク門(パリ広場)

フクシマは収束などしていません!

2020年3月11日にフクシマ原発事故は9周年を迎えます。

2020年の夏には東京オリンピックが開始されます。「アンダーコントロール」とは程遠い状況なのにもかかわらず、競技のいくつかが福島県で行われることになっています。事故を起こした原子炉からはいまだに放射能物質が大気に放出されており、汚染水が毎日流れ出ていて、何十万人という人々が故郷や生活の基盤を奪われたまま、未だにその打撃と心痛を抱えて生きていくことを余儀なくされています。原発事故はすでに収束したと世界に誇示するための格好の機会として、日本政府はオリンピックを利用しようとしているのです。原発最悪事故、その被害や影響を過小評価し、あたかも日常が戻ってきたかのように思わせようとしています。被害者を助け支援する代わりに、事故前まで適用されていた年間積算線量の基準許容値を単に20倍に引き上げることで、日本政府は避難した人々を線量の高い地区へ帰還させようとさえしています。私たちはこの政策に断固として反対します!

原子力は気候変動の解決にはなりません!

汚染の恐怖:原子炉は放射線を半永久的に出し続ける危険な放射性廃棄物を生み出します。
危険すぎる:フクシマやチェルノブイリなどの重大事故は防げず、原子力技術イコール核技術で、新型原子爆弾の開発を推進するだけです。
無謀なコスト:原子力は二酸化炭素排出を減らすというなら、その中でも一番高価な方法です。
不当な定説:核の燃料サプライチェーンは二酸化炭素の排出量が少ないという定説は、正しくありません。
制御不可能:原発は再生可能エネルギーほど手軽に、インテリジェントな制御ができません。
解決にならない:気候変動は、いつか(廃棄物を含み危険のない)新世代の原発が完成するのを待ってはくれません。*注)これは新世代原発に賛成するものではありません。

私たちは次のことを求めます:

・汚染地域があたかも復興したように世界に誇示するためのオリンピック利用をやめること
・日本政府は、避難した人々を線量がまだ高い地域に戻そうとする帰還政策を即刻やめ、賠償金および支援金の支払いを続けること
・世界中の原子力施設、ことにドイツのグローナウのウラン濃縮工場やリンゲンの核燃料製造工場を即刻停止すること
・EURATOMおよびその他の原子力技術を促進する団体を解散すること
・原子力技術を促進するための補助金等を、再生可能エネルギーおよび放射性廃棄物処分・保管のための、独立した市民団体が管理する研究へ回すこと
・「核兵器禁止条約」の署名

主催:
Anti Atom Berlin (www.antiatomberlin.de)
Greenpeace Energy (www.greenpeace-energy.de)
NaturFreunde Berlin (www.naturfreunde-berlin.de)
Sayonara Nukes Berlin (www.sayonara-nukes-berlin.org)

共催:
AK Rote Beete (www.ak-rotebeete.de/)
Anti-Atom-Plenum Berlin (aap-berlin.squat.net)
BÜNDNIS 90/DIE GRÜNEN (www.gruene.de)
Coop AntiWar Cafe (www.coopcafeberlin.de)
Die Linke Landesverband Berlin (www.dielinke.berlin/nc/start)
Friedensglockengesellschaft Berlin e.V. (www.weltfriedensglocke-berlin.de)
ICAN Deutschland (www.icanw.de)
Interkulturelles Haus in Schöneberg (www.ikhberlin.de)
IPPNW Germany (www.ippnw.de)
Kuhle Wampe (www.kuhle-wampe.de/kuhle-wampe-berlin)

NEWS:かざぐるまワークショップ2020

日時:2020年2月22日 13時から17時
場所:Interkulturelles Haus Schöneberg, Geßlerstr. 11, 10829 Berlin

コーヒーを飲みながら午後の工作はいかがですか?今年も3月7日に行われる「かざぐるまデモ*」で配るかざぐるまをみんなで作ります。お子様の参加も歓迎します。ぜひご家族やご友人をお誘いあわせの上、足をお運びください。

2018年のワークショップの様子

針金を切ったり曲げたりするペンチ、はさみや千枚通しをお持ちの方はご持参ください。そのほかの必要な材料はすべて会場に用意してあります。

 

 

*かざぐるまデモって?

かざぐるまデモ 
 - フクシマ9周年 -

2020年3月7日土曜日 
12時より
ブランデンブルグ門パリ広場

www.kazagurumademo.de

主催:Sayonara Nukes Berlin

原子力と環境保護 : 偽りの親環境派  tazの記事和訳

Atomenergie und Klimaschutz: Falsche Klimafreunde

偽りの親環境派

ライマー・パウル

原子力で気候環境目標がより容易に達成されるのだと、原子力産業のロビーイストたちが主張している。しかし、それは正しくない。

原子力産業のファンたちは気候環境危機の時期には朝の空気を感じ取る(朝の空気を感じ取る:諺でチャンスをうかがうの意味)。二酸化炭素の出ないことを自称する原発を稼働延長したり、新設したりすることによって、環境目標がより容易に達成されるのだと、原子力産業やそれと組んだ政治勢力が主張している。「Sundays for Future」をモットーに、国際原子力ロビー機構の Nuclear Pride Coalitionが10月20日ついに世界中でアクションとデモを組織した。

政党所属またはそれに近い立場をとる原子力産業および石炭産業の組織、新社会自由市場イニシアティブ(INSM)、さらにNuclear Pride、技術のための市民といった財団や産業寄りの見せかけの市民運動が原子力と石炭火力発電所に賛成して行動を起こし、再生エネルギーを抹殺しようとしているが、この原子力の擁護派には、あのビル・ゲイツも入っている。『ワシントン・ポスト』紙によれば、彼は最近、原子力エネルギーの誤った有利不利について説得するために、アメリカ連邦議会の議員たちと会合をもった。ある公開書簡で彼はこう書いている。「核エネルギーは気候変動に対応するのに理想的である。なぜなら、それは唯一二酸化炭素を出さず、スケーラブルなエネルギー源であり、四六時中利用可能だからである」。マイクロソフトの創立者ゲイツはTerraPowerという会社をもっているが、ここでは新種の原子炉開発研究が行われているのである。

11月の末に、ヨーロッパ議会はマドリッドの気候環境会議(正式には「第25回気候変動枠組条約締約国会議」)の決議を修正し、いまや原子力は気候環境の救い手だとされている。この修正にCDU/CSU、FDP、AfDから38人のドイツ人議員が賛成票を投じ、残り52人は反対であった。かつて欧州委員会の委員だったギュンター・エッティンガー(CDU)は、どうせ原子力は必要不可欠になると述べたが、彼の同志ノルトライン=ヴェストファーレン州政府首相アルミン・ラシェット(CDU)も最近、核からの撤退は早すぎたと嘆くに至っている。

この『taz』紙にも核に賛成する記事が誤って寄稿された。「小さい害としての核エネルギー」というタイトルのもとに、二人の客員ライターは次のような非難を展開している。彼らはtaz Panter財団に属し、一人は原発企業EnBWの職員である。彼らによれば、ドイツは「緑の圧力によって」核の研究開発を広範囲にストップしてしまった。これに対し、将来を見据えるEUの隣国は原子力によるエネルギー転換までの時期に橋を架けたのだと。

経営的には原発の建設はもはや意味はない。コストが何倍にもなったからである。

「気候環境にニュートラルな原子力」というが、いったい何が真実なのだろうか。環境団体や反原発団体はロビー活動でなされる論議をファクトチェックすることを始めている。それによると、地球上に存在する原発は現在そのすべてで世界のエネルギー需要の2%、電力需要の10%を占めているが、そうなると、地球の二酸化炭素放出をわずかに減らすだけでも、膨大な数の原発の新設が必要になる。しかし、それは気候環境保護に間に合うほど早く建設できない。それにエネルギー需要が高まるため、古い原子炉も休むことができなくなる。

地球の温暖化を2度までに抑えるためには、世界中の二酸化炭素放出量を現在の370億トンから2050年の期待値50億トンにまで下げなければならない。ヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所の報告では、このシナリオのために原発が寄与するのはせいぜい5%だとされている。しかもそのためだけでも何千もの原発が新設される必要があるというわけだが、それにしてもなんとグロテスクなヴィジョンだろう。

しかも、原発はけっして気候環境にニュートラルではない。環境庁によれば、ウラン鉱の採鉱、破砕、選鉱、核燃料への変換は放射性廃棄物の処理や保管、廃炉、ウラン採鉱地域の再自然化と同様、汚染の原因となる。ウラン鉱山の搾取が進行すれば、結果はさらに悪化するだろう。さらに最終処分で発生する二酸化炭素の放出に関しては予測もつかないのである。

原発はきわめて危険でコストのかかるものであるが、これは今後もそのままであろう。いわゆる平常運転でも原発は放射能を環境に放出している。最近では代替エネルギー資源は原子力発電よりはるかにコスト安になっている。営業的には原発の建設はもはや割りが合わず、コストが何倍にもなっている。専門家たちの見積もりでは、たとえばフランスのスーパー原子炉フラマンヴィルを建設するには60億ユーロかかるという。したがって原発は独裁国や半独裁国、あるいは原子力産業が国営であったり、膨大な助成金が出たりする国でしか新設されないのである。核融合炉のような、多大な努力がなされている絶対安全な新型原子炉の開発は停滞してしまっており、今後20年でこのテクノロジーが利用に供されることはない。

予測不可能なリスク

最後に、とりわけ高放射能性の核廃棄物の最終処分は世界中の政府にとって、いまだとっかかりも見つけられない大きな挑戦課題となっている。それにはまた、最近出た『World Nuclear Waste Report – Focus Europe』に述べられているような予測不可能な技術上、ロジスティクス上、経済上のリスクが伴う。

このレポートによれば、ヨーロッパだけでも - ロシアとスロヴァキアを除く - 6万トン以上の使用済み核燃料棒が中間処理施設に貯蔵されているという。これまで高放射性核廃棄物のための最終処分施設を稼働させた国がないからである。さらに、このレポートによると、ヨーロッパではこれまでにすでに250万㎥以上の放射性廃棄物が貯まっているという。ヨーロッパの原発はその耐用年数を超えて、およそ660万㎥の放射能廃棄物を生産しているのである。

このレポートは世界の国々から集まった何十人もの研究者たちによってまとめられたものであり、原子力の専門家マイクル・シュナイダーを中心とした研究チームによって毎年発行されている定評のある『World Nuclear Industry Status Report』を補足するものである。核時代が始まって70年後の今日、放射能を発するこの原発の遺産を真に解決することができた国は世界に一つとして存在していない。

(『taz』2019年12月14日記事)


元記事:

Atomenergie und Klimaschutz: Falsche Klimafreunde – taz.de

https://taz.de/Atomenergie-und-Klimaschutz/!5646067/

著者:ライマー・パウル

1955年生まれ。フリー・ジャーナリスト、執筆者。専門分野は環境、原発、交通、保健。おもに『taz』『Tagesspiegel』その他通信社。

『主戦場』ベルリン上映会 2019

今『主戦場』で起きていること

永井潤子さん

ベルリン在住のジャーナリストで、ベルリン女の会の永井潤子さんが、デザキ監督の11月の訪欧の予定を聞いて監督と連絡を取り合ったのがことの始まりだった。準備期間のあまりの短さに、会場探しが暗礁に乗り上げていたところ、私たちSayonara Nukes Berlin(SNB)の有志で新たに立ち上げた平和を考える会が後を引き継いだ。ベルリンでの11月20日の開催日程が確定したのは、9月12日のことであった。

急な申し出にもかかわらず、キャンセル待ちで快く会場を提供していただいたAUSLANDのMarioさんには、この場を借りてあらためて感謝の意を表したい。作品の上映費用が高額であったため、何の後ろ盾もない私たち市民による活動では、例によって限られた資金で十分な機材の揃った会場を探すことが容易であるとは言えない。日本国外の有力紙や日本での報道が過熱する中、20代から30代の若者を中心に、およそ86人の来場者があり、一人でも多くの来場者に観ていただきたいという気持ちが勝り、立ち見はもちろん、冷たい床にも座って鑑賞していただかねばならなくなった。私もその中の一人で、テンポの速い映画に心は駆り立てられながらも舞台袖の床で臀部は冷たい石の様に固まっていた。AUSLANDから入場規制がかかり、足を運んでくださった一部の方には心苦しくも入場を断ることにもなった。また、予定していた英日通訳の方が継続不可能となり、急遽、本来は独日通訳者であるSNBの梶川が代行したことで、彼女にとっても大変な仕事を押し付けることになり、何よりみなさまにご不便をおかけすることとなったことをお詫びしたい。

作品中に登場するのは愛知トリエンナーレの時の慰安婦像(平和の少女像)であり、この展覧会は検閲されてしまったのだが、様々な方々が展示するべきと活動されたので、いったん撤去されたものの最終的には少しの期間展示されることになった。川崎市のしんゆり映画祭でも『主戦場』の上映を拒まれ、その時も愛知トリエンナーレと同様の種類の物議をかもし、作品に訴訟が起きていることから、そうした作品を見せないほうが良いのではないかという議論になった。若松プロダクションによる作品を取り下げる形での抗議や、是枝監督が急遽登壇して声明を発信するなどし、最終日に『主戦場』が上映されている。

デザキ監督からは、裁判の結果は出ておらず、法律上はまだ何も決定していないのに、ただ訴訟が起きているということが理由となって検閲されてしまうことは恐ろしいことではないか。スラップ訴訟というのも危険であるし、アーティストのなかでも、こうした作品に訴訟が起きるということで、委縮してしまうのではないかということも怖いことだと思う。日本では表現の自由がずいぶんと失われてきているのではないか、そういうお話があった。

デザキ監督は現在、テキサス親父ことトニー・マラーノ、そのマネージャーの藤木俊一、カリフォルニア州の弁護士で、日本のテレビタレントであるケント・ギルバート、新しい歴史教科書をつくる会の藤岡信勝、なでしこアクションの山本優美子の5人の出演者(順不同、敬称略)から訴訟を起こされている。11月14日に二度目の公聴会が終わったところだが、彼らは自分たちの発言を、発言していないとは主張できないし、発言を捏造されたわけでもないため、彼らは訴えの理由に、これが商業的な作品になるとは考えていなかったことをあげている。監督は、アメリカでのそうした問題を熟知していることからも、きちんとした契約書を作成して保管していることを自身のSNSでも報告している。4月の日本での公開が始まる前に、監督は出演者らに電子メールを送っている。その内容は、作品が公開されること、その試写会への招待だった。監督によると、テキサス親父のマネージャーは、おめでとう!と言ってくれた。ケント・ギルバートは、宣伝材料があれば自身のSNSで紹介するのでぜひ送ってほしいと言い、監督は何も送らなかったが、彼は実際にSNSで映画のトレイラーを共有し、さらには産業経済新聞社が発行している月刊誌『正論』でも、映画の宣伝をして商業的なことに協力してくれていた。しかし彼は契約書が日本語であったために読めなかったと言っている。もちろん彼は英語版の承諾書に署名している。これから彼は自分をどのように弁護するのだろうか。

これが今、主戦場で起きていることだ。

上映後の主な質疑応答
-加瀬英明(日本会議)は質問に真面目に答えていないのではないか

監督:彼はとても賢い人である。本気だったと思うし、彼は高名な外交官の家に生まれて育ち、何を言っても許される立場で恐れるものがないのだと思う。

-日本の若者は慰安婦について知らないふりをしているのでは

監督:大学の教授たちが学生らにこの映画について話したところ、学生たちも慰安婦問題について十分に知らないことが多かった。作品中でインタビューに登場した若者は、日本の代表的な若者だと考えている。理由の一つに、歴史教育がされていないため、例えば“慰安婦”という言葉も報道でしか知ることができないだろう。

-加瀬英明は日本が戦争で勝ったと言っているが、それも本気で発言したと思うか

監督:彼は、日本は東南アジアをヨーロッパの侵略から救ったと考えている。それで日本が中国や韓国などを植民地化していたとは考えていない。

-韓国と日本の関係がすごくこじれてしまっているが…

監督:安倍首相や歴史修正主義者の発言に対抗するよりも、慰安婦問題を史実に基づいて忠実に伝えようとしている人を応援すること、もちろん自らもそのことを認識し、世界中にこの問題のために活動する人々がいるので、そういう人々に連帯していくことが大事なのではないか。これは日韓の問題であることには変わりないので、当然日韓できちんと話し合っていくほか解決の方法はないだろう。

-元ナショナリストのケネディさんがそういう方だと知っていたか

監督:藤木さんからケネディ日砂恵さんについての話があり、彼女がたくさんのお金を払って調査をさせていたこともそこで聞いた。それで彼女の存在を知り、彼女にコンタクトを取ったところインタビューに応じてくれた。藤木さんの話がなければ、彼女のことを知り得なかった。ありがとう藤木さん。

 

また数々のハプニングに見舞われながらも、鑑賞後に来場者から寄せられた、独英日三か国語によるアンケートには心励まされるものがあったので、その一部を紹介したい。

・感情的な問題をかなり客観的に説明していると思った。
・ドイツ人として、ヒトラーのようなシステムが再びパワーアップするのを見ている気がした。
・非常に重要だ。私たちにはファシズムに対抗するクリティカルな映画が必要だ。
・私は映画を観ながらとても怒りを覚え、考えさせられた。これからはもっとこの問題のために運動していきたい。
・自分の無知を思い知らしめられた。「知っている」というのは言葉として知っているだけであり、内容までは知らないのだと分かった。
・日本ではメディアの規制も多く、正しい情報が得られていないことを強く実感した。
・報道の自由が段階的に失われている日本で、事実に基づいた情報を得るヒントがあればほしい。教科書の改ざんや政府とメディアの癒着から慰安婦問題を知らない日本人が多いのではと感じた。両方の視点から様々な情報が描き出されており、どのようなことが起きているかを知るにはとても良いと思った。
・言葉にならなかった。個人的にこの問題について調べていたので知っていたが、それもよく理解できたのはここ数年の事。知らないということが一番恥ずかしく思う。友人たちにも拡めたいと思う。
・想像していた以上の詳細な資料と映像で、一度観たただけだと頭が整理できなかった。もう一度と言わず何度か今後観に行く。
・情報量が多かったので数回観たいと思った。
・二回目の鑑賞、テンポが早い映画なのでもう一度見る機会に恵まれてうれしい。

(文責Rokko)


『主戦場』上映会でミキ・デザキ監督を同行して

イベントを企画実行するとハプニングがあるのは付き物だが、今回も予定していたフライトでない別の飛行機で別の空港に監督が到着することになるなど、最初からハプニングが待ち構えていた。それでも無事に空港で監督を迎え、今回のデザキ監督ベルリンへの招待で協力関係にあったKorea Verbandが予約しておいたホテルに彼をお連れした。イベント場所での集合時間まで少し時間があったため、会場に行くまで二人で話す時間がたくさんあった。私はそういう意味では、一番彼と個人的に話す時間が長く、それで映画のテーマ以外にもあらゆるテーマについて彼と意見交換をする機会に恵まれたので、得をしたのではないかと思っている。

デザキ監督は洞察力の鋭く落ち着いた分析のできる、明晰かつ気さくで気難しいところのない人だというのが私の印象だ。彼とはもちろん映画と歴史修正主義者や日本のネトウヨの話、慰安婦問題はたまた戦争責任問題に関するあらゆる日本での問題点も話したが、それ以外にも戦時中アメリカにいた日系アメリカ人が体験した問題や、移民問題全体、人類が抱えている差別という問題についてもあらゆる視点から話をすることができた。さらに、彼が5年ほど英語教師として日本に滞在したり上智の大学院に行ったりしていたときに日本の若者と多く接する機会があったことから、日本の教育問題に対しても鋭い批判を持っていることが分かった。私もかねてから日本の教育問題については悲観しているが、彼もこれだけ「馬鹿で無知でいる」ことがクールだとみなされている環境(彼はだから日本人が馬鹿だ、と言っているのではなく、馬鹿げた、難しいことを言わないスタンスを保つ方が格好良いと見なされるということへの嘆きを問題にしている)、政治的社会的に発言しないだけでなく、そういうことに興味を示し、ましてや意見を持つことが「ダサい」とみなされる雰囲気、「空気を読む」能力ばかりが発達する社会になってしまっていることに警鐘を鳴らしている。問題意識を持っている人も、だからこそ意義ある運動をしている人もグループももちろんあるのだが、それが固まって大きな力になっていかないこと、そして若い年代の運動者が生まれず先細りになっていることも、これからはますます厳しくなるだろう、という予想で意見が一致した。ことに、日本では女性差別が世界水準でも149か国のうちガーナやアルメニア、ミャンマーより低い110位(!)であり、優秀な女性たちが、能力を生かす仕事を得られず、活躍できないつまらない日本を飛び出してどんどん海外に行ってしまうこと、それから昔はエリートの中でも1年くらいハーバードなどに行って「箔をつける」ことがよしとされていたのに、今ではそれはキャリアにとって「不利」されているために海外に出る人がどんどん少なくなり、「井の中の蛙」の日本人ばかりになっていることなども嘆き合った。デザキ監督曰く「それでも優秀な人には日本にとどまってもらわなければ日本はますます退廃する」というようなことを言っていて、同感である(そういう私もさっさと日本を飛び出して出てきてしまったので例外ではないが)。

彼からはさらに、彼がどのように日本と接触し始めたかという話を聞いた。彼の両親は70年代にアメリカに移民としてやってきて以来、ずっとアメリカで暮らしている。彼はアメリカで生まれ育ち、男ばかりの兄弟3人の様子だが、ほかの二人は全然日本に興味もなく日本語もほとんどできないという話だった。彼らも私の子どもたちと同様に補習校に小さい時通わされ、しかも彼が行った日本語補習校は帰国する予定の子女を対象としている学校だったため、日本語のレベルもスピードも高く、とてもついていけなくて、母親は毎週のように「子どもをどう説得して連れていくか」が闘いの毎日だったらしい(私の記憶にも新しい)。お母さんは自宅でNHKの放送などを見ているものの、うちでは皆英語で話し(あるいは親が日本語で話しても子どもは英語で答える)、日本に帰るつもりも一切ない、というところで育ってきて、彼自身、最初は日本に興味など持っていなかった。二十歳になって初めて日本に来た時も、上智の帰国子女の入る枠(英語で授業を受けるコース)に1年留学しただけだったので、特別日本語がうまくなったわけでもなかった。彼が日本の政治的社会的問題に興味を持ったのは、英語教師として日本で仕事をし始めてからということだ。

「主戦場」を見れば、彼がどういう経緯でこの映画のテーマを取材するようになったか説明されているのでわかるが、全体を通してこの映画はとても丹念に計算された構造になっていると思う。映画ではテーマ項目別にインタビューを交えながら、慰安婦が何人いたか、とか強制連行はあったのか、または慰安婦は「性奴隷」だったかどうかという核心に迫っていったが、彼は単に意見が異なる人たちの話を客観的に対置して見せたのではない。インタビューの話における矛盾や疑問点をはっきり見据え、その上でインタビューを編集し選択し提示していったはっきりした視線、メッセージ、意見があったからこそ、実際の史実に迫ることができたし、だからこそこの映画は説得力があったのではないだろうか。慰安婦問題をたとえば「数字」の問題にすり替えてしまうことの怖さ、つまり歴史修正主義者からもそこで矛盾を指摘されたり、ひいてはその存在すらも否定されたり、運動家からも事実を「劇的に脚色」するために悪用されたりする、その危険性をしっかり指摘し、同時に河野談話以降、日本の「歴史教科書」がたどってきた展開(つまりいかに日本では子どもたちに史実を伝えない方向に進んできたか)も明らかにしている。そして大切なのは、アメリカの戦後の日本における戦勝国としての影響力、政治的防衛的意味における戦略と、それと切り離せない安倍首相の祖父以来の政治リーダーとの繋がりも明示していることである。映画の最後に彼が問いかけたのは、ほかでもない日本人が「アメリカが始める(始めたい)戦争に参加したいのか」という本質をつくテーマであった。これこそ今、安倍が率いる自民党が願ってやまない「憲法改正」、そして自民党がさらに日本を導いていこうとしているあらゆる思惑を前に、日本人がしっかりと意識して判断しなければいけないことではないのか、そう彼はこの映画を通じて問いただしている、と私は思う。過去の日本軍、日本政府、日本人の行為を史実、証言を通じてありのままを理解し、忘れないよう記憶する努力を進めることが、今後の自分たちの判断、倫理、意識の形成につながるものであることを理解しなければ、私たちはこれからも平気で同じ過ちを繰り返すだろう。映画の中で証言していた元兵士の方が語っていたひどい日本人の当時の倫理や人種差別、女性蔑視、国粋主義は、現在の日本人でも同じようなものではないのか? それは自分たちがやってきたことを見て分析し、理解し、反省しようとする意志と努力があまりにないからではないのか? ドイツでは今でもさかんにErinnerungskultur(記憶の文化)といういい方を使って「ナチスの時代の過ちをはっきりと見据え、記憶し、残すこと」を努力しており、それがドイツ連邦政府の理念であることをことあるごとく強調しているが(それがどこまで浸透しているかどうかは別問題として)、それこそが日本に一番足りない要素ではないだろうか。今の日本政府の沖縄米軍基地問題の対応一つをとっても、この問題は深く繋がっているのである。デザキ監督をベルリンに招くことができて、とてもよかったと思っている。(文責YU)


主戦場公式ウェブサイト:http://www.shusenjo.jp/
Shusenjo official website:https://www.shusenjo.com/


ミキ デザキ:ドキュメンタリー映像作家、YouTuber。1983年、アメリカ・フロリダ州生まれの日系アメリカ人2世。ミネソタ大学ツイン・シティーズ校で医大予科生として生理学専攻で学位を取得後、2007年にJETプログラムの外国人英語等教育補助員として来日し、山梨県と沖縄県の中高等学校で5年間、教鞭を執る。同時にYouTuber「Medama Sensei」として、コメディビデオや日本、アメリカの差別問題をテーマに映像作品を数多く制作、公開。タイで仏教僧となるための修行の後、2015年に再来日。上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科修士課程を2018年に修了。

 

ドイツの再生可能エネルギーに学ぶ福島の高校生 2019

メモを取る高校生たち、私も負けじとメモを取る

2019年8月11日。この日は福島を伝え再生可能エネルギーを学ぶ福島からの高校生たちのために、ベルリンに在住する再生可能エネルギーと環境政策のエキスパートである、西村健佑さんの講演が開かれた。

提供:UMwErlin

背景にある模様はClimate Stripe/気候ストライプと言われ、温暖化の傾向を視覚的に伝えるものだ。日本、ドイツ、北米、世界の過去20年に遡った気温の推移を表したストライプの紹介の後で、気候変動によって野生動物の生態系にも変化が見られており、このところはClimate Crisis/気候危機とも呼ばれるようになっている。今夏の欧州は二度の熱波に見舞われ、ドイツも二回の過去最高気温を記録したが、最も深刻なのはアイスランドやグリーンランドで観測史上最も多く氷河が融解している。放っておけば2020年代の終わりには北極の氷はほとんど失われるだろうといわれている。スウェーデンの高校生グレタさんが始め、国際的に拡大している気候変動問題のための学校ストライキについてはご存じの方も多いだろう。福島の高校生たちは、ベルリンで行われたこのFridays for Futureにも参加して、再生可能エネルギーの拡大を訴えている。(*1)

基礎中の基礎、エネルギー資源とは。

提供:UMwErlin

再生可能エネルギーは無限にあって環境に優しいが新しい土地が要る、原子力エネルギーは少ない量で多くのエネルギーを生み出すが、ウラン採掘からの健康被害、廃棄物の問題ともに深刻だ。化石燃料は万能型と呼ばれ、貯蔵や移動も簡単、しかし環境破壊、地球温暖化の原因につながっている。

提供:UMwErlin

これまでのドイツの脱原発までの道のりを電力の歴史と振り返る。ドイツのエネルギー転換は1986年のチェルノブイリの事故後、80年代後半には始まっている。2000年初頭には当時の政権が電力会社との脱原発への合意を得るも、のちのメルケル政権によってこの政策は後退していた。2011年に起きた先進国日本の福島の原発事故による衝撃は大きく、メルケル政権は2050年に最終的なエネルギー転換を完結するべく大きく舵を切った。2020年には脱原発、2025年には電力供給の40~45%、2030年には60%、2050年には80%の再エネ化を目標に掲げ、今年の話し合いでは2038年には脱化石燃料が新たな目標に加わった。

再エネと名高いドイツで本当に重要とされるのは省エネ。

省エネというと、冷暖房の我慢をはじめ、私たちの暮らしを窮屈なものにするようなイメージがあるが、実際にはどういう取り組みがなされているのか。

ドイツの建築物は壁が厚い!厚いほどに断熱性が高くなる。夏は屋外の熱を入れず、冬は屋内の熱を逃さない。年間を通してエネルギーを使わずに一定の温度が保たれる。また日本の窓枠に使われるアルミは熱伝導率が高いためドイツでは主に樹脂や木材が使われる。

ひとつには建物の性能をあげる(*2)ことであると西村さん。ドイツでは国で定められている省エネルギー政令の基準を満たさない新たな建築はできない。既存のアパートや家屋を改修する際にも、この基準が適用されなければならない。政令の基準は日本よりずっと高く、日本で一般的に売られているハウスメーカーの住宅では、各社の最高品質のものでもこの基準を満たすことは難しい。日本の学校ではせっかく設置された冷房が使われないなどの声を耳にするが、省エネ建築の窓を入れ替えてブラインドを入れ替えるだけでも学校の室温はだいぶ変わりますと西村さん。目指すべきは我慢することではなくほしいものを伝えること、エネルギーを使わなくても快適な居住空間や教室を手に入れることができる。

再エネはコストが高い、使いづらい、不安定と言われているが。

ドイツでは再エネの発電単価は、すでに原発や化石燃料よりも安くなっており、2014年には再エネの買取価格はこれまでの3分の1以下に。原発や化石燃料の高い理由には多大な補助金も含まれている。

提供:UMwErlin

ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州にある人口700人ほどの町ザーベック(*3)にある高校の高校生が自分たちの学校の屋根に太陽光パネルを設置して、この電気を販売し、売り上げを遠足などに利用している。こうした取り組みの結果、ドイツ国内の再生可能エネルギーの発電設備の所有者は、そのほとんどが市民である。およそ35%は家屋に太陽光パネルを設置している市民。ほか風力やバイオマス設備のほとんどが農家、そして電力会社ではない一般の民間企業。ドイツの大手電力会社4社は全体の5%しか所有していない。理由に大きな企業は効率の悪いものには投資できないことがあげられ、”使いづらさ”はむしろ一般市民の取り組み易さにつながっている。

提供:UMwErlin

また再エネの安定化には課題が残るもすでに技術はそろっている。電力の安定化というが、供給側のみならず、需要側である私たちが使用する電力も実は不安定であると西村さん。こちらは2014年6月28日サッカーのワールドカップの決勝戦の日のブラジルの電力消費図。青いラインは通常の一日を表している。この日は赤いラインで決勝戦があったため、仕事をしないもしくは早々帰宅して自宅やパブで試合を観戦したことで午後にはグラフが深く落ちている。ハーフタイムには、おそらく一斉に冷蔵庫を開けて飲み物を取ったりしたのではないか、ちょっぴり突起している。試合終了後には街に繰り出し大騒ぎをしたであろう、再び電力の消費量が上がっている。

こうした電力の需要と供給の安定化を目指すためのドイツの取り組みは、小規模の再エネ発電を制御し、管理することを目的としたVPPと言われるVirtual power plant/仮想発電所だ。日本ではまだ完全とは言えないが、ローカルエナジーみんな電力でも取り組んでおり、熊本電力でも試みがなされようとしている。

なぜドイツは再エネと省エネの道を選ぶことになったのだろう。

日本の福島の原発事故を受け、時のメルケル首相が専門家を招集し安全なエネルギー供給に関する倫理委員会を設けたことは有名である。技術者による報告では、ドイツでは地震や津波がないことから、同様の事故が起きる確率は限りなく低いというものであった。しかし倫理委員会では、倫理的なエネルギー制度をつくりたいのであれば原子力はやめたほうが良い、地球温暖化をもたらすエネルギーからも脱退したほうが良い。これらの使用をやめることで、ドイツ社会には一時的な負担がかかるが、次世代のことを考えるなら今その方向に舵を切り、投資をする必要があるとの結論を示し、市民の批判や運動の高まりとともにメルケル首相の脱原発を後押ししたのである。

みんなが使うエネルギーをみんなが決めてよいし、決めなくてはならない。

第四世代原子炉に向けた技術やそれを推進したい人々がいるなか、総合して個人的に調べた結果、原発は要らないと考えるようになった。誰かの意見を聞くだけではなく、自ら調べて選んで決めて、できる限り行動してほしいと西村さん。

例えば30万人規模の日本の自治体が化石エネルギーを買うために、およそ40億円のお金が出ている。再エネを選択することで、この費用の3分の1から半分のお金を地域にとどめ、循環させることで、より良い意思決定を長期的にしていくことが可能である。安い電力を地域の外から買うだけでは全体的な最適化は成り立たない。こうした全体最適と部分最適の観点も大事である。そして情報の真贋を自ら確認すること、エネルギーを選べる時代に選ぶことへの責任、立場の違う人々との効率的なコミュニケーションについてを説かれた。講演を通して西村さんの人柄や人生哲学をも垣間見たように思う。

※一部に筆者による補足と脚色が含まれます。


*1:独で世界的な環境保護行動に参加 福島の高校生9人:社会:中日新聞(CHUNICHI Web)  https://www.chunichi.co.jp/s/article/2019081001001415.html

*2:ドイツの環境建築 – ドイツ生活情報満載!ドイツニュースダイジェスト http://www.newsdigest.de/newsde/features/8672-environmental-architecture-1/

*3:エネルギー政策の大転換を自治体が実践 - ドイツ NRW州の町ザーベックの挑戦 2014 https://www.klimakommune-saerbeck.de/city_info/display/dokument/show.cfm?region_id=408&id=375006


講演者:西村健佑氏 

ベルリン自由大学・環境政策研究所環境学修士、エネルギー市場・政策エキスパート、ベルリンでエネルギー市場調査に関するコンサルタント会社Umwerlin (https://note.com/umwerlin) を経営。欧州のエネルギー・産業政策の調査、通訳、翻訳、また日独中小企業のビジネスコンサルも手がける。クラブヴォーバンメンバー。共著に『海外キャリアのつくり方 〜 ドイツ・エネルギーから社会を変える仕事とは? 〜 』『進化するエネルギービジネス(ポストFIT時代のドイツ)』

福島からの高校生と独日高校生交流会 2019

2019年8月8日、日本のNGO団体アースウォーカーズによる、福島を伝え再生可能エネルギーを学ぶ福島・ドイツ高校生交流プロジェクトの一環で開催された独日高校生交流会に参加した。

会場はプレンツラウアーベルグ地区にあるギムナジウム
絆・ベルリンのフランク・ブローゼ会長

会場のギムナジウムの校長のあいさつの後、ベルリンのNPO団体、絆・ベルリンのブローゼ会長によって、津波の解説や、東北大震災の被災地で立ち上げた数々のプロジェクトの紹介がされた。

ジャーナリストのふくもとまさおさん

ベルリン在住のジャーナリストであるふくもとまさおさんからは、福島の原発事故後の避難指示区域の解除の基準として年間線量20mSv(*1)が限界値となったが、これは本来原発作業員などに適用される値で、帰還地域ではそれが子どもや妊婦など公衆一般に適用されており、さらに原発通常運転時の国際標準として年間1mSvが現在上限値となっているが、それもいずれ年間20mSvに引き上げられることを心配しているとのお話があった。

小玉さんが2019年3月に国道6号線の原発から2km界隈を走る車内で撮影された動画によると、測定値はおよそ0.6μSv/hから最高で1.8μSv/hを超えた。通常一般市民が立ち入りを許可される区域ではないが、一般車の通行が事実上可能となっている。

福島の高校生らの英語でのスピーチを前に、アースウォーカーズの代表理事である小玉さんから、農作物の放射性物質は震災直後はかなり高かったが、今では一部の山菜や魚以外からは、ほとんど検出されなくなり、それらも事前に検査され市場に出荷されにくくなっていること(*2)、9人の高校生の居住地が異なることからも原発事故当時からこれまでに身を置かれる状況や体験も異なることが説明された。

聖真さん

聖真さんは、東北大震災の当時7歳、保護者の迎えを待って小学校から帰宅する道すがらに見た、倒壊した家屋や市役所の様子を語った。およそ1年後に政府による除染活動が始まり、自宅の周りの放射線量は減少している。当時は外遊びを叱られる理由を理解できなかったが、やがて原子力による発電は危険であると認識し、クリーンエネルギーに関心を持つようになった。

崚真さん
崚真さん

崚真さんも震災当時7歳だった。祖父母の家に向かう車内で感じた東北大震災の恐怖を語った。福島の原発の事故を知り、他県に住む親戚の家におよそひと月ほど避難した。学校の再開後に配られたひとりひと箱のマスク、外遊びは禁止され、学校の窓が開くことはなかった。福島県のナンバープレートを付けた車が他県で嫌がらせを受けた話に悔しい思いを抱くも、旅行先では福島から来たということを告げるのがためらわれた。福島県産の食べ物は、市場に流通する前に検査がされるようになったため、ほかの土地のものよりむしろ安全になっていると思う。僕たちは放射線の使い方を身勝手に間違えた、節度を持って扱えば人命をも救う。将来は放射線技師になりたいと述べた。

菫さん

菫さんは8歳だった。家族みんなが自らの命を守ることに必死だった当時の状況を語る。まだ雪の降る季節の避難所の固い床で家族で身を寄せ合って寝た三日間は忘れられない。物資の限られる中、心身ともに疲弊した。8年を経て復興が進むが、まだ避難生活を送る人がたくさんいる。津波の被害を受けた一部の地域は、時が止まったように当時のままである。

華恵さんと、発表を励ます菫さん

華恵さんは、避難地域の浪江町に住んでいた。発表の最中、涙に言葉が詰まった。避難所では大人の弱さを見ることとなったと語る。衛生状況の悪さから体調を崩すなどつらかった避難所から、夏は暑く冬は寒すぎるという仮設住宅に移る。8年の月日は早かったが、この間に賠償金をもらっている、放射線を持ち込んでいる、避難先を出ていけなどのひどい言葉をあびてきた。親しい友人からは、ロッカーに死ねと書かれた。福島県は変わっていないと思う。浪江町に行くことがあるが、瓦礫はなくなるも居住者が激減し活気を失った町の様子から良い方向に向かっているとは思わないが、元の浪江町に戻したほうが良いと思うので行動していきたいと語った。

美悠さん

美悠さんは9歳だった。電力会社に勤めていたため呼び出しを受け発電所に駆け付けた家族の身を案じて眠れぬ夜を過ごした。原発の事故の影響で、大好きな外遊びが制限されていたが、8年を経て、次第に元の日常を取り戻しつつある様子を語った。原発はたくさんのエネルギーを生み出すものの事故が起きた時の被害の甚大さを知り、福島県のみならず、日本全国で再生可能エネルギーの発展を願っている。

愛由さん

愛由さんは7歳だった。津波の被害をそれほど受けない町にいたが、報道を見た時のその衝撃は大きかった。当時は原発の事故や放出された放射性物質による被害の深刻さがわからなかったが、原発の事故によって避難せざるを得なかった友人ができたことを境に、理解を深めるようになった。食品の安全も図られ、福島はゆっくり回復しつつあるが、かつての姿はない。悲劇的な事故が福島で二度と起こらないことを願っていると述べた。

真帆さん

真帆さんは7歳だった。震災直後は生活に必要なあらゆるものが手に入らなかったこと、また放射性物質による汚染のために、真夏であっても肌の露出を避けるため長袖や長ズボンで過ごし、様々な野外活動の制限を受けた。県内でも最も放射線の測定値の高い町に住んでいたため、級友の半分は引越を余儀なくされ、友人からは避難先でばい菌のように扱われたとの体験談を聞いた。除染が進み、学校給食から消えた福島県産の農産物も検査を重ねて戻ってきており、震災前の暮らしを取り戻しつつある。

颯人さん

颯人さんは7歳だった。原発の事故により、多くの人々が避難したが、避難所では動物が受け入れられなかったために、ペットが取り残され命を失ったりした。被災したペットの多くには新しい飼い主が見つかるも、まだ飼い主の見つかっていない動物もいる。また被災した犬のなかには訓練によって災害救助犬になった犬がいる、自らもドッグトレイナーになりたいという夢を語った。

里桜さん

里桜さんは、かつての記憶に涙をつのらせながら、原発の事故の影響から友人が避難したり、学校に通えなくなったりしたことがつらかったが、もっともつらく怒りが湧いたのは報道やネットの情報が適切ではなかったことだと述べ、メディアリテラシーに対する不信感を感じた。そのため、友人は避難先で、放射能が移るから近寄るな、福島に帰れなどの暴言をあびるいじめにあった。そうした中、世界中から届く支援や韓国や中国から届いた励ましの言葉に感動し、今度は自分が困っている世界中の人々を助けたいとその意欲を語った。

福島の原発事故を受けて、国内外で様々な議論の声が上がるなか、取り残されたままの現地の声もあるのではないか。私は、生活を変えることを余儀なくされた人々、当たり前に生きる権利を奪われる人々を思えば、原子力エネルギーを発電に利用することに反対する立場である。日本政府には、直ちに政策の過ちを認め、エネルギー政策の転換を求めたい。また私たちが身を守るために必要な正確な情報公開を望むと同時に、自らも正しい情報を習得して発信できるよう努めたい。

会場からは、震災や原発事故から心的外傷を負った子どもたちをケアする取り組みはなされているのかという質問の声が上がった。自治体や学校ごとに取り組みがなされるべきではあるかと思う。福島県のウェブサイトには、被災者への心のケアや派遣支援のマニュアルの紹介があり、そのほか子どもの育成企画や状況報告はされている。NPO法人で相馬フォローケアチームという有志による取り組み等があるが、外部からは福島県内の取り組みの全容を知るには至らなかった。

2013年から支援の調達状況の限り取り組まれてきたこの企画であるが、折に触れて高校生たちの経験が互いへの連帯感や学びの見聞を広める様子を見ることができた。帰国報告会は、8月18日10:00〜東京ボランティアセンター(飯田橋駅徒歩2分)、8月18日18:00〜福島市ダイユーエイトMAX4階アオウゼ研修室(福島駅徒歩6分)。また各年齢に応じて福島県内に居住する子どもたちの県外での保養など、多くの企画を手がけている。詳細はウェブサイトにて:アースウォーカーズ。

2019 福島・ドイツ高校生交流プロジェクト 帰国報告会: https://youtu.be/Wbjz4svIDlo @YouTube


*1:京都大学原子炉実験所の今中哲司さんによる記事を紹介したい。◇「20ミリシーベルト」と幻の安全・安心論 今中哲二 岩波「科学」2017年7月号 (岩波書店許諾)

*2: 福島県のウェブサイトでは県内の農産物をはじめとする各種放射線モニタリング検査の結果や詳細が公開されている。
https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal/list280-889.html


高校生たちが各自作文し発表された内容については、全文から公平に抜粋するよう努めたもので、表現については発表のまま掲載する。

福島県をはじめとする各自治体の農産物の放射線検査とその安全性については、当団体が推奨するものではなく、各ご家庭の自主的な判断に任せるものとする。

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