The L and R problem

Sayonara Nukes Berlinはメンバーの他、様々な人たちの参加・助けをいただいて活動している。先日、いつも我々の活動を手伝ってくださるミュージシャンのManami.Nこと長針真奈美さんのライブがあったので行ってみた。

Berlin のFreunde Guter Musik e.V.主催の社会派作品を集めた3日間にわたるライブ・イベント Relevante Musik – Festival of Political Media Art, Performance and Musicだ。こういうイベントが企画されて、普通の学生や社会人がたくさんやってくるのがいかにもベルリンらしい。日本だったら、ちょっとでも政治色が出ると敬遠されてしまうだろう。

Manami.N さんは日本で一般企業に勤めるかたわらバンド活動をしていたが、ある日突然ドイツ人の音楽関係者から、「君たちの音楽はおもしろいからドイツに来てライブをしないか?」とコンタクトがあり、お金を貯めて、2003年にライプチヒ、ケムニッツ、ハンブルクでライブを実現させた。それからベルリンが気に入って、2006年に日本からベルリンに本格移住。エレクトロニック・ミュージック、ゲーム音楽などの制作に携わっている。

そんなManami.Nさんが原発のこと、エネルギーのことを考えるようになったのは、やはり3.11がきっかけだという。知れば知るほど疑問が湧く原発問題。未来の世代に対して無責任なこの原発政策を推し進めてきた日本。福島第一原発事故という大惨事を起こしたにもかかわらず、命を一番に優先するという誠実な対応に欠ける国と東電。権力・官僚・経済の癒着で脱原発に潔く移行する決断ができない国。なぜそうなのか。

Manami.Nさんはその源泉をたどってみるべく日本の歴史的事実を拾い上げて調べてみた。そこでひとつの共通点を見つけた。それは、福島の問題と戦争責任の取り方は、その精神構造が似ているということだ。犯した重大な罪に対する贖罪の意識なく、犠牲者の痛みに寄り添わず、なし崩し的に何もなかったかのように背を向ける。

今回のライブで初披露した作品 『The L  and R problem』は、流れる映像とともに、日本が包み隠したい出来事を淡々と、しかしそのことを見つめていくという覚悟のようなものが感じられる声で歌う、なかなかお腹にずっしりくるものだった。

心で感じていてもなかなか発言できないことを、外国に住む日本人の視点で、作品を通して発信していくことが、表現者としての役割であるとManami.Nさんは最近強く感じている。これからまたどんな表現が彼女から生まれるか楽しみだ。

 

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ライブの様子、今後の活動予定などはManami.Nホームページをご覧ください。

http://manami-n.com/

高雄綾子先生を招いて。

8月30日。横浜市で市民測定所を立ち上げられた代表のひとりである高雄綾子先生にお越しいただき、“食の安全と市民測定所~震災後2年間の活動”と題して講演会を行った。

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福島第一原発の事故以後、友人の中には放射線測定器の購入に踏み切った者もいた。やはり子供を抱える母たちはいち早く敏感だった。高雄先生のお話によると、横浜の市民測定所にはチェルノブイリで活躍したと云われるセシウムを測定するためのATOMTEX 1320Aという測定器があるそうだ。立ち上げ当初、賛同者から寄付を募り、この150万円の機械を購入する事が出来たと言う。この様な高価な装置を用いても食品の測定には大変な労力を伴うと言う。

例えば、水分の多いものほど値が低くなるなど、測定が困難になる。肉や魚などは、非常に細かく刻み、測定中の腐敗を防ぐための処理を施すなど、主婦を中心としたボランティアメンバーたちが試行錯誤を重ね、限られた時間の中で様々な食品の調査をされているということだ。

こうした活動が実を結び、横浜市では、こちらの市民測定所のウェブサイトでの発表を意識するに至り、現在では神奈川県の他の市に比べ、横浜市の自治体による放射線測定数が増え、学校給食での産地の公開などから市民が子供に与える食品を選別する機会が持てる様にもなったということだ。ひとえに尽力された市民測定所のみなさんの努力の賜物である。食品の測定依頼は主に有料で行われ、または既出の測定結果もすべてが無料で公開されているわけではない。これは市民測定所の厳しい台所事情にもあるように、事故後2年を経て、活動を支援する為の会員数が半減するなど人々の関心が薄れつつあることも起因する。

今後、取り組んでいかねばならないことは、水産品の汚染についての測定だろう。今までの汚染状況やこうした測定結果などは、チェルノブイリの事故後にも見られた様子に酷似しているそうだが、私たちは未だかつてなかった大規模な海洋の汚染と云う未曽有の危機に瀕している。

もっともっと、海産品の汚染状況を調べていかなければ。しかし、魚をキロ単位で購入するコストや、セシウムばかりでなくストロンチウムまでもを調べるための機械は1500万円もするばかりか24時間の監視体制も必要だと言う。人々の不安や真実を求める声が、こうした市民測定所の支援に繋がればと切に願う。

本日のお話にもあったように、何をどこまで許容できるかはあくまで個人の問題である。市民測定所は、正しい知識を正確に伝えていく事で、市民がやみくもな不安に陥れられることなく日常を送る事ができる手助けに他ならない。台所を預かる一主婦としても(ジェンダーのみなさま悪しからず)、私の持てる責任は大きいのだな、とつくづく感じさせられる講演となった。

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難しい勉強会の合間に、癒しの歌声がWerkstadtに響く。

ベルリンに在住して間もないソプラニスタ皆川卓志氏が「Amazing Grace」をアカペラでの披露。9月3日のイベントでは、彼の新たな挑戦を見せてくれる。
イベント詳細https://www.facebook.com/events/1409172132630648/

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既におなじみとなった放射線テレックスのトーマス・デアゼー氏にも、来場者からの質問に答えてもらえることとなった。チェルノブイリから27年。未だ汚染の深刻な被害が残るドイツの水道水は調査され続けているのか、食品汚染のその後はどうなっているのだろうか。日本の現況を含め、続きは後日コラムにて。

講演中に発表のあった、日本全国での測定結果の統合を目指すフォーラムはコチラhttp://minnanods.jimdo.com/

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多忙な滞在期間中にも関わらずボランティアでこのような機会を設けて下さった高雄先生をはじめ、デアゼー氏、皆川氏にこの場を借りてあらためて感謝の意を表したい。

最後になるが、今回よりWerkstadtでの室料が発生する事になった。ご協力いただいたみなさまにも感謝したい。また、この日のグッズの収益と募金75.30ユーロは今後の脱原発運動に役立てたい。R

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高雄綾子:フェリス女学院大学国際交流学部専任講師。東京大学大学院教育学研究科満期取得退学。専門は社会教育学、環境教育学。ドイツの環境市民運動が社会の多方面に影響を与えたことに関心を持ち、環境教育の分野からその影響を研究中。

横浜市民測定所共同代表。http://www.ycrms.net/

高雄先生のチェルノブイリ事故後のドイツ市民測定所運動と市民の学びについてのコラム

http://econavi.eic.or.jp/ecorepo/live/series/34