おしどりマコ・ケンさんベルリン講演会2018

 去る2018年4月10日、東日本大震災以降福島第一原発の取材を続けている漫才コンビのおしどりマコさんとケンさんが、講演のために日本より訪れた。マコさんは震災後ジャーナリストとしても活躍し、いまでは取材がほとんど途絶えている定期的な東電の記者会見に毎回足を運んでは、現状の取材と現状の取材と執筆活動、更には現地の人々との交流を定期的に続けている。一方で相方のケンさんは、マコさんの活動を記録・サポートする傍ら、政治的メッセージを込めた針金のアート作品を創作している。

来場者に挨拶をするマコさんとケンさん

 講演の中では、2020年のオリンピック開催を控えたいま、事実とは異なる情報を政府が流していること、また未だに決着のつかない裁判が数多く残っていることなどが明らかになった。政府によって通常の生活を送るのに問題がないとされてきた場所で、住民はそれを信じてこれまで通りに住んでいたが、安全とされていた近くの湧き水を飲み続けてきた農家の男性は、2014年にようやくその水が汚染されていることを知った。通常通りの生活を送った結果、周辺地域に住む人々の甲状腺がん発症者は増加しているという。彼らやその他の地域の人々は政府に責任を取るよう交渉と要求を続けるも、原発事故作業員ではない自営業者であるため法律上保護の対象からは除外されており、全ては自己責任であるとして、政府からの救済や措置は未だになされていない異常な状況が続いている。
 

熱心に話に耳を傾ける来場者

 信じられないような事実が明らかにされる中で一番に衝撃を受けたのが、現在の福島第一原発で最も被曝を受ける作業についての話だった。2011年の震災以降、毎日400トンもの高濃度汚染水が汚水タンクへと運ばれている。早急にタンクを設置する必要に迫られた政府は、2012年よりフランジとボルトを用いて金属板を簡易的に接合し、幾つもの粗雑で安直な汚水タンクを作り上げた。その結果2013年には継ぎ目から汚染水が漏れ出し始め、政府は2014年に継ぎ目を溶接したタンクを設置する方針に切り替えた。それにより、ポンプによって旧来のタンクから新たなタンクへと汚染水を移動する作業が始まった。しかしポンプでは抜ききれずに各タンクの底にはおよそ10cm程の水が溜まるという。その水を2018年の現在もなお作業員がモップでいちいち拭いて除去しているというのだから、身震いした。その間の被曝を避けるため、地面にはゴムマットを敷き、周囲の壁には合板を張るというが、当初作られた粗悪なタンクもさることながら、このような方法で被曝を避けられるはずもなく、政府の作業員、命と人権のある人間に対する信じがたい措置である。作業員は毎月20ミリシーベルトもの被曝を受けながら作業を続けている。

フランジタンクの解説

 

 

講演後アコーディオンと特製アンペルマンで日本の現在を風刺した歌を披露した二人。会場を沸かせていた。

 福島第一原発のみならず、これまでの日本社会の問題を『自己責任』として責任転嫁し続けてきた日本政府。国の母体である国民各々を『自己』としておきながら、自己にまるで日本国政府は含まれていない。マコさんの話を聴き終えて、日本国民という国家に守られうるであろう存在も、日本国という立派で安全とされる土地や政府国家も、ただの幻想でしかないことを改めて認識した。根無し草のようにドイツへと渡りベルリンに住む私だが、日本だろうとどの国に住もうと、日本の政府や国家に依らない新たな根を自ら張らなければいけないと、身が引き締まる。その私の根を太くしてくれたおしどりマコさんとケンさんの懸命な取材と講演、そしてこの貴重な機会に感謝の気持ちでいっぱいである。       

会場に展示されたケンさんの作品より