フクシマでの聖火リレー開始に向けて、IPPNWドイツ支部、ausgestrahlt、SNBの共同プレスリリース

2020年3月24日午前11時ににIPPNWドイツ支部とausgestrahltとSNBは以下のプレスリリースを共同で公表した。つまり、2020年夏に開催予定の東京オリンピックが1年延期されることが公表される前のことである。当初の計画では、このプレスリリースで批判されている聖火リレーが3月26日の木曜に、事故を起こした福島第一原子力発電所から遠くないJビレッジでスタートされる予定になっていた。

オリンピックの延期に伴い、私たちは引き続き1年間このテーマと取り組んでいかなければならない。2020年東京オリンピックは(まだアンダーコントロールでない)フクシマのためではなく、コロナウィルスのために延期になったからだ。

 

Pressemitteilung von IPPNW, ausgestrahlt und Sayonara Nukes Berlin
Olympia-Show in der Fukushima-Sperrzone
Kritik am Start des Olympischen Fackeltransports am 26. März

https://www.ippnw.de/presse/artikel/de/olympia-show-in-der-fukushima-sperrz.html

2020年3月7日(土)フクシマ9周年かざぐるまデモ@ベルリン

去年亡くなられた木内みどりさんから送呈していただいた横断幕 撮影:Bernd Frieboese

天気予報では雨だったが、デモの間、雨は降らないでいてくれたのが救いだった。それでも嵐のような風で、舞台のパヴィリオンの屋根がブランデンブルク門の吹き抜けの風にあおられてひっくり返るかと思われるほどだった。かざぐるまがくるくると回り過ぎ…横断幕が風に吹き飛ばされそう…ダンス舞台を区切るための三角コーンも倒された…などと風によるハプニングはあったものの、無事今年もかざぐるまデモを終えることができた。

ブランデンブルグ門を背に 撮影:Rokko

デモの集合場所がパリ広場ではなくて反対側になっていたり、デモルートが最初の予定とは違っていたりというハプニングもあったが、雨模様という天気予報、そしてコロナウィルスのため人の出が悪くなっているにもかかわらず、集まってくれた人たちが今年もたくさんいたことを嬉しく思う。そして雰囲気はとてもよかった。いろいろなことはこれまでにもあったが、それでも何年も一緒にデモをしてきて、その信頼感が出来上がっていることを、NaturfreundeのUwe Hiksch(司会担当)や、Greenpeace EnergyのChristophや、IPPNW GermanyのAlex Rosenなどと話をしていて実感でき、そのことが実績なのだと感じた。また、数日前に緑の党の議員Sylvia Kotting-Uhl氏が演説をキャンセルしてきたり、ICANの人は来なかったのだが、この日の演説者の内容は濃く、それでいて長すぎなくて、寒い風の中を立っている人が震えすぎずに済んだのも、後から見ればよかったと思う。

津軽三味線・川口汐美さん 撮影:Bernd Frieboese

まずは津軽三味線の川口汐美さんの演奏とTsukiさんのダンスから始まった。寒くて、しかも風が吹きとおす舞台で、汐美さんもTsukiさんもよく力を出してくれた。津軽三味線の音は迫力があり、たくさんの人に印象深く映ったようで、あれは何という楽器なの?という質問をいくつも受けた。

ダンスのTsukiさん 撮影:Bernd Frieboese

Tsukiさんは羽衣を感じさせる布を使った踊りで、風が強かったことがかえって良かったかもしれない。こうした機会に恵まれたことをとても喜んでくれた。二人に気持ちよく引き受けていただいて今年もライブ音楽のあるデモが行われたことに感謝したい。

NaturfreundeのUwe Hiksch 撮影:Rokko
ゆうの演説 撮影:Bernd Frieboese

その後に挨拶と演説が二人続いた。司会のUweから挨拶とともに、フクシマはまだ収束していない、そしてことに昨今、気候温暖化で二酸化炭素排出を減らすために原子力エネルギーの見直しを迫る声などが上がり始めた今、原子力エネルギーは気候温暖化を救うものではない、と訴えることの重要さ、それから今も変わらず核武装の恐怖があり、ドイツは脱原発を決定し、動き出したものの、変わらずウラン濃縮や燃料棒製造工場が操業している、EURATOMは相変わらず存在する、などに言及した話によるデモ開始宣言があった後、このかざぐるまデモを毎年企画し、参加団体を呼び掛けるSayonara Nukes Berlin(SNB)を代表して私のことが紹介された。私は日本人の一人として、とにかくフクシマの現状を伝え、収束などしていないのにあたかもすべてが復興して元通りになったかのような錯覚を世界に与えようとする場としてオリンピックを悪用しようとしている政府を批判する話をした。内容的には武藤類子さんからのメッセージにも言及された内容に沿ったものにした。

Sayonara Nukes Berlinを代表してゆうの演説(日独):

2020年3月7日かざぐるまデモ Sayonara Nukes Berlin 演説和訳

Sayonara Nukes Berlin Rede für die Kazaguruma-Demo am 7. März 2020
武藤類子さん
今年も、福島第一原子力発電所の事故による被害者で、福島原発告訴団の団長である武藤類子さんからメッセージが届いたので、ドイツ語と英語に翻訳したものを配布することができた。英訳は、英国在住の日本人を中心に活動する反原発団体JAN UKの有志によるもの。

武藤類子さんのメッセージ(日独英): 
武藤類子さんのメッセージ 2020 日本語
Botschaft von Frau Ruiko Muto 2020 Deutsch
Message from Ruiko Muto 2020 English 
IPPNWのAlex Rosen 撮影:Bernd Frieboese

次に緑の党のSylvia Kotting-Uhl氏が演説予定だったが、キャンセルとなったため、IPPNWのドイツ支部代表Alex Rosen氏が医者の立場から話をしてくれた。彼は原稿を持たずに演説したので私の記憶だけで心に留まったことを書き留めたい。チェルノブイリではソ連はあらゆる過ちを犯したのは確かだが、それでもただ一つこのことは彼らも認めて実行した。つまり、放射線被害の高いところは、除染などはできないため、そこには住民はこれからそこに住まわせることは何百年先までできない、ということである。そこでソ連は、線量の高い場所の住民を別の場所に避難させた。日本は、そのことを認めようとしない。除染ということが可能であるということにして、多大な費用をエネルギーと時間をつぎ込んで、除染を行ってきた。そもそもはそこが問題である。山や森などは除染は不可能だし、土をそぎ取ってもその土をどこに隔離して保管するかということもしっかり行われていない。「除染」しても、一度雨が降ったり風が吹けば、山や森からすぐに放射能が吹き飛んでくるので、無意味だ。ことに、聖火リレーをJヴィレッジで始めたいためもあり、双葉の一部で今避難解除が行われたが、ここではGreenpeaceが線量の高いホットスポットをたくさん見つけており、それを指摘してまた除染しても、1メートル離れたところでは高い線量がまた見つかる、というもぐら叩きのような感じである。そういう場所に子どもたちを応援に連れていく、または若い選手を連れてきてリレーさせる、ということが非常に問題である。それから、ゆうの演説で一つだけ反論したいのは、FUKUSHIMA is under controlと安倍首相が言ったのは、彼の目からすれば「フクシマは政府を含めた原子力村によって見事に制御、抑制されている」という意味においては正しい、ということだ。彼らは今でもうまく「コントロール」している。それを変えていかなければならない、というようなことをAlex Rosenは明快に話してくれた。

撮影:Uwe Hiksch

それからデモ行進に移った。大体150人ほどだったと思うが、それでもかざぐるまを手にした人たち、数々の横断幕をもった人たちでベルリンの中心街の通りが埋まった。コロナウィルスの影響で観光客が少ないのが目に立った。いつもなら観光客で賑わう土曜日のベルリン中心街で、こんなに人が少ないのは初めてだ、というくらい人が少なかった。それでも私たちのデモを見て写真を撮る人、声をかける人たちも数々いた。

AntiAtomPlenumの演説者 撮影:Rokko

ブランデンブルク門前まで戻り、また汐美さんによる演奏で皆が集まってから、次の演説に移った。ICANの演説者は残念ながら現れなかったので、AntiAtomPlenumの女性の演説から始まった。彼女はことに放射性廃棄物の問題を取り上げ、ことに今年の2月にまた使用済核燃料乾式キャスク(ドイツではCastorと呼ばれる)がイギリスの再処理工場セラフィールドから送り返されて3月1日にヘッセン州のBiblis中間貯蔵施設に運ばれることになっていることを語った。よく知られている通り、ドイツではGorlebenなどのグループが中心となってかねてよりこのキャスク輸送の抵抗運動があり、デモ隊が線路に鎖で自分を繋げたり、道路に横たわったりする反対運動が繰り広げられてきた。2015年に連邦政府が電気会社との話し合いで決定して以来、このキャスクの行き場はGorlebenではなくBiblisになっている。これから運ばれるキャスクは21もあるようだが、これらはBiblis、Philippsburg、IsarそしてBrokdorfのいわゆる中間貯蔵施設に分けられて貯蔵されることになる。このキャスク輸送の反対運動というのは、この恐ろしい放射性廃棄物のキャスクを輸送するということは危険であるだけでなく、そうした危険な放射性廃棄物を「作らないようにする」ことには一切努力せず、それを処分する場所もないのに「中間貯蔵」という体裁で安全とは言えない貯蔵をしようとするために大変なお金をかけ、リスクを冒すことをたくさんの人に知ってもらうため、そうした政府の原子力エネルギーに対する態度を批判するために行ってきているものだ。そしてこの輸送は、「安全確保の理由」のために前もってどこをいつどのルートを通って輸送されるかは、知らされない。それで、この抵抗運動に興味のある人には、情報を伝えるためのメールリストに参加したり、またはSMSで事前に運動情報を伝えるために携帯番号を教えるシステムがあるので、https://castor-stoppen.de/を読んでほしいと伝えていた。

それから最後に演説をしたのは、2016年のProtestival以来、ずっとデモに参加してくれているGreenpeace EnergyのChristoph Raschである。演説の全文をここに掲載する。

Greenpeace EnergyのChristoph Raschの演説(日独):

2020年3月7日かざぐるまデモ Greenpeace Energy 演説和訳

Greenpeace Energy Rede auf der Kazaguruma-Demo am 7. März 2020
最後に記念撮影 撮影:Uwe Hiksch

Uweの提案で、初めてだが参加者全員がブランデンブルク門前に並んで写真を撮った。Uweがその夕方さっそくFlickerに載せた写真をここにも掲示する。

かざぐるまが威勢よく回った9周年目のかざぐるまデモ。コロナウィルスの関係で日本でもフクシマ追悼行事が中止になったり、小規模な集まりに縮小されたりしていると聞くが、それでもベルリンで今年もデモを成功させ、私たちの意思表示をしたことを喜びたい。コロナ蔓延の危機マネージメントを見ても、本当に被害者を少なくするため、人々を守るためよりは、なるべく数を少なくしたい(だから検査しない)、自分たちのコントロール下に置きたい(だから民間業者に依頼しない)政府のあり方が目立ち、フクシマの時と変わらない、と腹が立つ。これだけいろいろ自粛し、禁止・中止にしていて、それでどうして夏にオリンピックをしようというのか、と思うが、これから事態は変わる可能性もある。また、新型インフル特措法改定や緊急事態宣言が発令されるなどの危険性も出てきた。これからもよくよく注意して日本を見守り、声を上げていかなければならない。残念ながら、気の休まるゆとりがないのが今の日本であり、世界である。(ゆう)

Greenpeace Energy が3月11日を迎える前に発表した動画:

関連記事:

SNBを代表して、ゆうのインタビュー記事が3月11日にターゲシュピーゲル紙のウェブサイトに掲載された。紙面では9日発刊。

Fukushima ist noch lange nicht Geschichte https://www.tagesspiegel.de/sport/olympische-spiele-in-japan-fukushima-ist-noch-lange-nicht-geschichte/25621924.html