2019年3月9日(土)に恒例の「かざぐるまデモ」をブランデンブルク門を出発点として行った。これまで通り、Sayonara Nukes BerlinとNaturFreunde BerlinとAnti Atom Berlinが主催者として計画実行した。
今回のデモのテーマとして、行き場所のない「放射性廃棄物」問題とIPPNWでも反対キャンペーンを始めた「東京オリンピック」について取り上げる提案をSNBでは最初していたが、最終的にオリンピック問題をデモで取り上げるのは(反対ばかり、マイナス面ばかりを強調するデモはなるべくやめたいとの意見もあり)やめ、ドイツひいては世界中で変わらず未解決の大問題である廃棄物問題に集中することにした。SNBで叩き台として作った呼び掛け文に対しNaturFreundeとAnti Atom Berlinから訂正や補足があり、呼び掛け文が出来上がった。
今回はカズマBodypoetがデモ直前まで日本に行っていてパフォーマンスの準備が出来ないこともあり、デモの演説以外のプログラムとしてジャズの安藤明氏とそのグループThe Japsにライブ演奏をしてもらうこととなった。生の演奏ということでGEMAにも申告をしたりしていささか手続きは面倒であること、少し料金がかかることとなったが、ブランデンブルク門での日本のジャズの演奏はよかったし注目を浴びた。当日は旅行から帰ったばかりの病気のカズマが具合が悪いのに来て、最初の演奏に合わせて即興で踊ってくれた。ブランデンブルク門からウンターデンリンデンを下り 左に曲がって川沿いを歩き、フリードリヒシュトラーセの駅の方を回ってまたウンターデンリンデンに出てブランデンブルク門に戻るコースだったが、川沿いの道は人通りが少なく、コースとしてはあまり適していなかったかもしれない。
ブランデンブルク門に戻って3人がまた演説をしたあと、最後にまた演奏をしてもらった。最後の曲は、安藤さんがSNBに捧げてくれた「亡者」だった。快くデモでのライブ演奏をしてくれた安藤さんとThe Japsのメンバーに深謝。
安藤明とThe Japs バンドメンバー: 安藤明(コントラバス) 小瀬泉(ピアノ) 佐藤汎(サクソフォン) Felix Komoll(フルート) Zam Johnson(ドラム) 公式サイト:https://aandjaps.wixsite.com/sitetop
天気が心配されたが当日風は強かったものの雨にはならず幸いだった。しかし今年からベルリンでは3月8日の国際婦人デーが祭日となり、それが金曜だったため長い週末となってベルリンを留守にした人も多かったこと、前日の国際婦人デーのデモの動員数がすでに大きく、その翌日にまたフクシマ8周年というテーマで市民を動員するのは難しかった、またはほかのテーマ(例えば学校の生徒、学生が中心になってやっているFridays for Futureを始め、脱石炭など)の方が環境問題としては中心を占め、「脱原発」を一応決定したドイツでは原子力・核のテーマの重要性が意識から薄れてきていることなどから、最近の傾向ではあるがそれに輪をかけるようにデモ参加者は少なかった。8年も経つと意識は薄れ、「フクシマ原発事故」で人を動員するのは難しいことがよく分かった。一部の在独団体からは、これからデモは10周年、15周年と5年ごとに行うのがいいのではないかという意見もすでに出されている。これについては私たちも考えていかざるを得ないだろう。
というわけで大目に見て300名ほどだったが、それでも恒例の黄色いかざぐるまが強い風にくるくる回ってブランデンブルク門を飾り、まずThe Japsの音楽を合図にスタートした。NaturFreundeのUweが挨拶したのち、SNBを代表して私がフクシマの現状を簡単に伝える演説をした。その後BUND(ドイツ環境自然保護同盟)の代表Hubert Weigerがデモ呼び掛け文で私たちが訴えているように、脱原発を決定しながらもまだ実際の実現はできていない事実を挙げ、ウラン濃縮や核燃料製造からも一切手を引くことをドイツ政府に要求した。それからICANのLukas Breunigは、核兵器廃絶に対する彼らの運動と目標に関して話をした。デモ隊が出発してウンターデンリンデンを出てまたブランデンブルク門に戻ってからBürgerinitiative Lüchow-Dannenberg (ゴアレーベンの市民団体)代表のMartin Donat(2016年にも彼はパネルディスカッションとデモ演説に二度も来てくれた)がまだ最終処分場候補リストから外されないままいくつもの危険なキャスクを抱えているゴアレーベンでの現状について、Anti-Atom-Bündnis Berlin PotsdamのStephan Worseckが、今年末に予定されているヴァンゼーそば(Helmholtz Zentrum Berlin)の研究用原子炉BER II 廃炉計画について、そして最後にお馴染みのGreenpeace Energyの広報担当Christoph Raschがヨーロッパにおける原発をめぐる状況について話した。
SNBを代表したゆうの演説: Rede zur Demo Yu 和訳 Rede zur Demo Yu Deutsch Greenpeace EnergyのChristoph Raschの演説: Rede von Christoph Rasch 和訳 Rede von Christoph Rasch Deutsch
ベルリンで環境問題を専門にドイツ発信の最新問題を論じているブログ「緑の1kWh」でもかざぐるまデモを取材してくれ、詳しい記事を発表していただいたので、ここにそのリンクを紹介する:
https://midori1kwh.de/2019/03/13/10428
Greenpeace Energyのサイトでもこのデモを紹介する記事が掲載されている:
https://blog.greenpeace-energy.de/aktuelles/anti-atom-demo-keine-neuen-akws-in-europa/
今年もまたフクシマの女たちを代表する武藤類子さんからメッセージを寄せていただいたので、ドイツ語訳・英訳でデモの当日に配布した。 Botschaft von Frau Ruiko Muto Deutsch Message 2019 by Ruiko Muto English 2019年武藤類子さんによるメッセージ 日本語
SNBでもデモのミーティングに集まる人数が前年より減った。フクシマや原発に関する危機意識は、8年経って薄れてきているのは紛れもない事実だ。でも、私たちにはそれでもフクシマのことをチェルノブイリ事故や広島長崎の原爆投下と合わせて、警鐘を鳴らしていく義務があるということはデモの一週間後に行われた反省会でも確認し合えた。私たちも一人一人余裕のない忙しい生活を送っていることは確かで、これからそれぞれがどれだけSNBでの運動にアクティブに参加し行動していけるかはわからない。それでもとにかくせめて10周年の2021年まではデモは必ず続けようといい合った。
デモより1か月前に行われたおしどりマコ&ケン講演会での通訳や二人とのその前後の話し合いでも、フクシマが決して「過去」のことでも「アンダーコントロール」されていることでもないことをつくづく確信した。そしてそこで忘れ去られようとしている悲劇、なかったことにされようとしているたくさんの事実、国からすでに棄民として扱われているたくさんの人たちのことを、私たちはドイツに住んでいてもしっかり認識し、私たちに可能な範囲で周りの人に、これから生きていく人たちのために伝えていく義務があると再確認した。この当然の怒りは風化させてはならない、と思う。そして毎日世界中で増え続ける行き場のない恐ろしい放射性廃棄物に関しても、いまだに行われているウラン採掘やウラン濃縮・核燃料製造に関しても、危機感が薄れてしまうことにこそ危機感を覚えていたい。津波も地震も飛行機墜落事故もその他の人災も規模が大きくなればなるほど怖いし被害も広がるが、放射性物質さえなければその被害が何世代にもこれほど悲惨にわたって続くことはない。津波に呑み込まれたところも、地震であらゆるライフラインが絶たれたところも、それだけであるならその後同じ場所でまた営みを再建することが可能なはずだ。しかしフクシマ、チェルノブイリは、放射性物質のあるところではそれができないのだということをこんなにもあからさまに示しているのに、なんで人はそれを悟り、過りを正し、方向転換を行うことができないのか。それはしかしあらゆる環境問題、人権問題にも適用できることだろう。スウェーデンで一人で生徒のストライキを始めた現代のホープGreta Thunbergが「今もうすでに地球が火事だと皆にパニックになって慌ててほしい」と訴えていたが、私も同じ意見だ。私たち一人一人になにができるのか、これからも考え続け、行動し続けていきたいと確認するためのデモでもあった。(ゆう)
写真協力:
Bernd Frieboese
報道:
※リンク切れはご容赦ください。
ドイツでかざぐるまデモ「原発はコントロールできない」:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASM3974Z7M39UHBI02K.html