
https://mp-nuclear-free.com/Nuclear/2025_WNVF_01.html
2025年10月5日から6日にかけて、広島で原爆投下から80年を記念して、世界核被害者フォーラムが開かれた。これを主催したのは以下の団体である:
核兵器廃絶をめざすヒロシマの会 Hiroshima Alliance for Nuclear Weapons Abolition (HANWA)
核のない世界のためのマンハッタン・プロジェクト Manhattan Project for a Nuclear-Free World
呼びかけ団体は次の通りである:
日本原水爆被害者団体協議会 (Nihon Hidankyo)
原水爆禁止日本国民会議 (GENSUIKIN)
原水爆禁止日本協議会 (Gensuikyo)
2025年、広島・長崎は米国の原爆下から80年を迎えている。核の時代は、米国が広島・長崎に原爆を落とし人間が地上から人類を抹殺する力を手に入れ人類滅亡の危機に直面して始まった。原爆投下は、一瞬にして無数の無辜の民を虐殺し、ヒロシマ・ナガサキに未曾有の非人間的悲惨さの極みをもたらした。地獄の惨禍をくぐり抜け生き延びてきた被爆者は、放射能の影響に今なお苦しんでいる。国家のひき起こした戦争の結果もたらされた無差別大量虐殺の犠牲者への補償は切り捨てられたままである。
80余年にわたり、核利用を進めてきた国々と核産業は、放射能による健康への影響の事実を矮小化あるいは隠蔽し、核の軍事利用あるいは「平和」利用を問わず、世界中に核被害者=ヒバクシャを生み出してきた。核被害の多くは、先住民や植民地支配の下に置かれた人々に押し付けられてきた。そして、チェルノブイリ、福島の原発重大事故を起こしてもなお、これらの国々と核産業は、「地球温暖化対策」を口実に原発推進を掲げ、核被害をさらに拡大させようとしている。
私たちは、核利用の根底的な廃絶とこれ以上ヒバクシャをつくらない世界を目指し、核被害者および核被害者と共に闘う人々の国際的連帯の場を広島で作り出したい。ヒロシマから世界に届けよう!
核と人類は共存できない!
ヒバクシャの救済と人権獲得を!
世界の核被害者と共にヒロシマに集い、連帯の絆を結ぼう!
この主旨に連帯し、SNBではこのフォーラムで決議された世界核被害者の権利宣言の日本語版、英語版を私たちのサイトでも公開するととともに、ドイツ語圏の方たちも読めるよう、ドイツ語翻訳したので、それを記載する。(ゆう)
作業部会有志(五十音別)
● 安在尚人 NPO 法人世界ヒバクシャ展事務局長
● 井上まり 世界核被害者フォーラム共同代表、核の無い世界のためのマンハッタ
ン・プロジェクト共同創始者、ニューヨーク州弁護士
● 海渡雄一 弁護士、脱原発弁護団全国連絡会 共同代表
● 川野ゆきよ 世界核被害者フォーラム事務局次長、核兵器廃絶をめざすヒロシマ
の会(HANWA)運営委員
● 清水浩 韓国の原爆被害者を救援する市民の会広島支部
● 藤元康之 世界核被害者フォーラム事務局長・核兵器廃絶をめざすヒロシマの会
(HANWA)事務局長
● 振津かつみ チェルノブイリ・ヒバクシャ救援関西・共同代表、医師
● 森瀧春子 世界核被害者フォーラム共同代表、核兵器廃絶をめざすヒロシマの会
(HANWA)共同代表
● 森松明希子 東日本大震災避難者の会 Thanks & Dream(サンドリ)代表、原発
賠償関西訴訟原告団代表
● 籔井和夫 広島市在住ジャーナリスト、日本平和学会
世界核被害者の権利宣言 2025
1.この宣言の目的
1)世界核被害者の権利宣言 2025 は、核被害者の権利と補償確立に向けた、核被害者の人権宣言である。
2)核の加害者の責任を厳しく問い、核被害者の権利・補償の確立と核廃絶をめざす運動の指針を示す。
3)核被害者の権利と補償を確立するため、多分野にわたる具体的政策を提言し、その実現に向けて、国際社会及び各国政府、議会への働きかけに活用する。
4)核兵器や原発、ウランや核廃棄物、核燃料サイクルやそれを維持する政治的抑圧などの影響を受けた多様な核被災地やの核被害者の声を反映させ、核被害者自身及び核被害者と連帯する様々な人々との協働で作成し確認する。
- 核被害者の定義
原爆の被爆者、核実験の被害者、核物質を使った人体実験の被害者、核の軍事利用と民生利用の別を問わず、ウランの採掘・精錬・濃縮の活動、核の開発・利用・廃棄などの核兵器関連活動と原発・核燃料サイクルの全過程における労働と環境放射能汚染によるヒバクシャ、原発事故被害者、放射性廃棄物の劣化ウランを用いた兵器によるヒバクシャなど、の放射線被曝と放射能汚染による被害者すべてを含む。 - 基本的権利
核時代を終わらせない限り人類はいつでも核被害者=ヒバクシャになりうる。「核と人類は共存できない」ことを確認する。
現在と将来の核被害を防ぐために全ての人々は以下のことを求める権利を有する。 1.自然放射線および合意の上での医療用放射線以外の放射線被曝を受けないこと。
2.被曝労働を強制しないこと。被曝労働が回避できない場合には、最小化すること。
3.医療被曝を必要最小限に留めること。
4.放射線被ばくの危険性について、意図的な誤った情報ではなく正確な情報を学校教育、社会教育を通して提供すること。情報には以下のことを含めるべきである。放射線被ばくは、どんなに低い線量であっても線量に応じた健康リスクがあること。特に子どもや胎児は大人に比べて放射線被ばくへの感受性が桁違いに高いこと。また、生殖健康(リプロダクティブ・ヘルス)において、現在あるいは将来、妊娠、出産、新生児ケアに重要な役割を果たす母体を担う人に対する放射線被ばくの影響には、特別の配慮が必要であること。従って、現在、原子力産業が採用している「成人男性モデル」のみによる人体への被ばく健康影響の基準は、子どもや女性への健康影響を考慮していない点においても決定的に誤っていること。 5.事故時はもちろん、平常時においても、核施設の環境リスク評価が被ばく防護策や治療法に関する情報と共に透明性をもって公開されること。 6. 関連する政策の意思決定プロセス(過程)に参加すること。 利害関係者(ステークホルダー)と権利者の意思決定過程への参加は、関連する国の計画や政策を策定する際に、参加しやすく、包括的で、差別的ではなく、透明性のあるものでなければならない。 インフォームド・コンセント(利害関係者や権利者の十分な情報を得た上での合意)は、利害関係者が関連する国や地方の政策に関わるリスクの性質と程度を理解するために必要な知識や手段、通知とパブリックコメント(公開の意見募集)の機会を提供しなければならない。 政策の意思決定に同意するかについては、核正義への政策及び実践を保障するための監視とアドボカシー(権利擁護)を必要とし、その同意は強要してはならない。 核正義とは、核被害に関する情報公開、核被害者として認めること、加害者による謝罪、加害責任の追及、核被害者の救済と補償、汚染地域の環境修復、再発防止、核廃絶を含む。 7. 被ばくした個人や地域の被害に関する生きた経験と証言を正当に評価し、その調査結果を公的な文献や、被ばくと救済に関する政策に取り入れること。 8.予防原則と人道的観点に基づく関連政策を策定すること。 9.軍事・民生利用を問わず、核利用を拒否すること。これ以上の高レベル放射性廃棄物を生み出すことを拒否すること。核施設の建築、稼働または再稼働を拒否すること。 10.将来世代にこれ以上の核被害をもたらさないこと。
- 核被害者の健康と生活の保障のため
a. 医療を受ける権利
現在、疾病を有しているか否かに関わらず、「被ばくの事実」 (被ばく線量に関わらず)と「被ばくによる健康リスクの可能 性」があれば、核被害者として健康を守り、医療を受けること のできる権利。
これは「特定の放射線の曝露態様の下にあったこと、そしてその 曝露態様が放射能により健康被害が生ずることを否定することが できないものであったことを立証することで足りる(2021 年 7 月14 日広島高等裁判所「黒い雨」訴訟控訴審判決 151 頁が被爆者 援護法 1条 3 号の解釈として示した規範)」を基にする基準であ る。
医療を受ける前に、十分に情報を提供し、同意が自由にできるよう
保障すること。
治療の過程で研究が行われる場合は、被験者を保護するための倫 理規定及び研究基準を遵守すること。
b. 救済をうける権利
c. 生命と健康に対する権利
d. 関連する政策の決定プロセスに参加する権利を保障すること。
e. 核被害者の権利が侵害された場合に、国内および国際レベルの双 方で、効果的な司法もしくはその他の適切な支援を受ける権利
- 先住民族の権利
a. 先住⺠への差別・抑圧、植⺠地⽀配をなくす闘いへの⽀持と、先住⺠族の生存権と自己決定権の尊重が不可分であるとの視点に⽴った要求を求めるために、「先住民族の権利に関する国連宣言」は核被害者の権利の確立における最低基準である。 - 労働者被曝(職業被曝)
a. 労災補償、放射線防護・健康管理、被曝リスクに関する情報を受ける権利。
すでに⽣じている被害の労災補償、⽇常の被曝管理及び被曝線量を
最小限にする放射線防護・健康管理、放射線防護や被曝リスクに関
する教育・研修を受ける権利。
b. 被曝線量の測定・管理をされながら労働し、定期的な健康診断を受ける権利。
原則的には被曝線量を測定・管理されながら労働するという被曝 労働者の特殊な⽴場での権利の⾔及が必要である。放射線被曝を 伴なう労働について、日々の被曝線量を完全に把握し、その結果 と健康に対する影響について、十分な情報と知識を与えられる。 健康に対する影響を調査するために、労働者は、定期的な健康診 断を受ける。
c. 被曝管理と長期的な健康管理を受ける権利。
廃炉や廃棄物管理、「除染」や輸送などの処分・管理に伴う労働者
の被曝の影響と健康管理の必要性は長期にわたって残るため、離 職後も生涯にわたって健康管理と医療を受ける権利を有する。そ の権利を証明する公的機関が発行した証明書を所持する権利を有 する。
d. 危険な放射線被曝を伴う労働の危険性に関する情報を知る権利と被曝労働を拒否する権利
危険な放射線被曝を伴なう労働について、事前にその危険性につ いて十分な情報と知識を与えられる権利を有する。労働者が「許 容」被曝線量を受けた場合の死亡率や障害発生率などのリスクが 事前に公表されなければならない。当該労働に従事するか否かは、 その都度、労働者の自由な意思決定に委ねられる。
e. 被曝労働を拒否する権利と差別されない権利
被曝労働を拒否した場合と被ばく限度に達した場合に、当事者の 要求をもとに「代替え職場」での仕事を保障すること。労働を拒 否した場合でも、労動契約上、何らの不利益を受けない。軍人か 民間人か、元請けか下請けかなどの雇用形態にかかわらず、差別 されない権利を有する。原発労働において、重層下請け構造のよ うな被曝押し付ける構造は許されず、これを無くしていかなけれ ばならない。無くすまでの間においても、元請企業は、末端の労 働者の権利も補償することに誠実に取り組まなければならない。
f. 関連する政策の決定プロセスに参加する権利を保障すること。
g. 権利を主張した場合の弾圧、差別、解雇、報復などの不当な罰 則の対象にならないことを保障すること。
h. 事業者は、被曝事故があった場合、これを正確に記録し、保管 しなければならない。
i. 事業者は、被曝記録の作成及び管理の責任者を明確にし、ヒバク シャの求めに応じ、何時でもこれを開示しなければならない。
j. 以上の諸項目に違反して、労働者を働かせた使用者は、民事上の 損害賠償責任を負うとともに、行政罰、刑事罰を科せられる。
- 住民被ばく(⼀般公衆の被ばく。ウラン関連産業及び核施設の周辺 住民、核実験風下住民、原発を含む核施設の重大事故時の周辺及び 風下住民、等を含む。)
放射線被ばくをした全ての人は以下の権利を有する。
a. 被ばく線量のいかんに関わらず、後記の医療被ばくを除く、追加 被ばくを本人の承諾なしに受けた場合には、核被害者(ヒバクシャ)として認められるべきである。多くの場合、正確な個人被ばく線量 の推定は困難であるので、核被害地域に居たり、入域したり、放射 性降下物(フォールアウト)を受けたという状況証拠があれば核被 害者として認められるべきである。
b. ヒバクシャは、自らの被ばくの推定線量を知る権利を有する。
c. ヒバクシャは、自らの被ばくが、自らの肉体的、遺伝的、心理的 健康に与える影響について、正確な情報及び知識を得る権利を有する。
d. 関連する情報の公開を請求する権利。 放射線の安全に関する情報 については、人と将来世代の生命と身体に影響を及ぼすため、生き る権利を行使することに影響するものであるから、国家や軍・核産 業の利益をこれに優先させてはならず、全ての者が情報公開を請求 することができる。
e. リスクに関する情報を得る権利。 一般人が許容被ばく線量を受け た場合の死亡率や障害発生率などのリスクが公表されなければなら ない。
f. 被ばくによる人の健康と環境への影響を評価する知識と経験を持 つ独立した科学者及び専門家に助言を求める権利。
g. 将来の被ばくを最小限に抑えるためのリスク低減政策や放射線防 護政策を求める権利。
h. 持続的な健康診断と最善の医療の提供を、放射線被ばくによって 引き起こされる可能性のある全ての疾病について自己負担なく受け る権利の保障。疾病は、がん・白血病などの悪性疾患に限定されず、非ガン疾患も含まれる。
i. すべてのヒバクシャは、その放射線障害によってもたらされる各種 の疾病を予防するための最良の措置を受ける権利を有する。
j. 放射線被ばくと疾病の関連の有無を証明する義務は加害者にある。加害者は被害者の疾病について「被ばくと関係ない」ことを証明で きないならば補償すべきである。
k. 予防原則に基づき、いかなる低線量被ばくであっても線量に応じ た晩発性障害のリスクがあることを認め、放射線被ばくと被害者の 健康障害の間に因果関係が推定されるとの法原則を確立しなければ ならない。
l. 放射線被ばくによる晩発性障害、遺伝的障害については、時間の 経過は賠償を求める権利に影響を及ぼさない。加害者は時効を主張 してはならない。
m. 核施設(原発やウラン関連施設を含む)において環境中に大量の 放射性物質が放出された事故が起こった場合、政府は以下を認めな ければならない。
● 電離放射線を含む有害物質による被ばくから保護するための
予防と防護対策を受ける権利、避難者・移住者のための避難
の権利と、環境汚染による⽣業の喪失への補償、⽣活再建へ
の⽀援、コミュニティ全体の崩壊、⽣活・⽂化全体への被害
の補償を受ける権利。
● 家族は社会の自然かつ基本的な集団単位であり、社会と国家
による保護を受ける権利がある。子ども・胎児・妊婦への特
別な配慮が必要である。放射線被ばくのリスクを十分理解し
た上で、家族や親戚を救出するために行動する者を誰も止め
てはならない。
● 汚染した地域の住⺠・帰還者のための被ばく防護のための施
策や治療を受ける権利。それを保障するための食糧と飲料
水、健康・医療、住居、教育・情報、保養の提供などを含
む。
n. 核被災地の住民の権利を保障するための、各国の「補償法」を確 立し、強化すること。
o. 放射能汚染地域からの避難・移住の権利と、自発的に安全かつ尊 厳をもって帰還または他の場所への定住の選択を確実に行使できる ことを保障すること。
p. 国連憲章および主要な国際文書および関連する地域、国内、地方 の文書に基づく権利は、無国籍者または難民の人々を含む全ての 人々が、核被害によって避難した場合に保障されなければならない。
- 核被災地から避難した国内避難民に対しては、指示による避
難者・自主避難者を問わず、平等な条件で支援と補償を受け
る権利と、国際基準である国内避難に関する指導原則を適用
しなければならない。これを国の法律または地方の条例,お
よび行政における規則等に反映させることが推奨される。 - 避難民には帰還や別の土地への再定住,家族やコミュニティ
の再統合に関連する政策に基づく計画の決定プロセスに参加
する権利が保障されるべきである。
- 医療被曝について
a. 全ての人は医療被曝を必要最⼩限にとどめる権利を有する。
b. 被曝による健康リスクと患者の⽣命・健康を守るという患者に とっての利益を⼗分に説明した上で、患者⾃⾝が選択できる権利を 有する。(インフォームドコンセント)
c. 患者と医療従事者の被曝害を防ぐため、低線量被曝にリスクがあ ることを含む、放射線被曝の健康リスクに関する独立した最新の研 究や情報について、医学教育と医療者への再教育(研修)が必要で ある。
d. 健診業者や私的医療機関の経済的利益を優先させない。

































