最終処分の話をしようや (3): 最終処分とは? 放射性廃棄物の処分方法

前回は放射性廃棄物は何かの話をしました.今回はその処分の方法についてのお話です.

放射性廃棄物を処分する手順

現在,まだ放射性廃棄物に含まれる放射性物質を無害化する実用化された技術はありません.そのため,放射性物質が減衰して放射能濃度が下がるのを待つしかありません.ですから,放射性廃棄物を最終処分場に長期間保管して,人体や周辺の環境にできるだけ影響のないようにします. 廃棄物のうち,低中レベル放射性廃棄物は熱を発生しないので,基本的にはすぐに最終処分が可能です.しかし,次の理由から現状では一時的に中間貯蔵しています:

  • 最終処分場がない (例: 日本をはじめとしてほとんどの原発立地国)
  • 最終処分場があっても順番がくるまで時間がかかる

高レベル放射性廃棄物は高温の熱を発しているので,まずそれを冷却しなければなりません.そのため,中間貯蔵施設に保管して冷えるのを待ちます.高レベル放射能廃棄物である使用済み核燃料は,まず原子建屋内にある燃料貯蔵プールで通常3〜5年間冷却します.次に,中間貯蔵施設に30年から50年保管して十分に冷えたら,最終処分します.この中間貯蔵についてもどこで,どう保管するかの問題があります. また,ごくわずかですが,日本など使用済み核燃料を再処理している国もあります.その場合は,使用済み核燃料を原子炉建屋内の燃料貯蔵プールに保管した後,再処理施設に送るまで原発サイト内の貯蔵プールに保管します.日本の場合ここまでで約 10 年をかけます.再処理の際に出る廃液などは,高温で溶かしたガラス成分と一緒にキャニスタという容器にいれ,ガラス固化体とします. 中間貯蔵では,原発サイト内毎に分散して保管するか,数ヵ所にまとめて保管します.ドイツの場合は現在,使用済み核燃料はサイト内で分散保管,ガラス固化体は一ヶ所で中央保管しています. 保管する方法には,貯蔵プールに直接入れて水で冷却しながら保管する方法(プール式)と,保管容器に入れて地上の倉庫で空気で冷やしながら保管する方法(乾式)があります.水を使うプール方式は比較的場所をとらず,特別な容器も必要ないので,その分コストを低くできるという利点はありますが,地震などでプールに亀裂ができて水が漏れてしまうと,空焚きになってしまう危険があります. 乾式では自然に空気だけで冷却するのでこのような問題は回避できますが,中性子線を周辺の環境に放出している危険があります.日本は地震が多いにもかかわらず,貯蔵プール方式を採用しています.ですから,たとえ原子炉がすべて停止していても,日本には常に地震によって大惨事が起きる危険があることになります. ドイツは乾式を採用しています.ドイツの例はゴアレーベンにあります.勉強会ではゴアレーベンの映像を拝見しました.キャスクと呼ばれる排熱フィンのついた保管容器を貯蔵施設内に立ててある様子がありました. どちらの方式にせよこの中間貯蔵所で30年から50年冷却された後,最終処分がなされます.この手順を次の図 3にまとめます.flow_process_ja

図 3. 使用済み核燃料の処分の流れ

やまうちメモ

ガラス固化体についての補足:

ガラス固化体は製造直後は人間が近くにいれば20秒で死亡するという高い放射線を発しており,表面温度は200度C を越えます.(電気事業連合会のホームページより[1]) これも中間貯蔵して30年から50年間冷却します.再処理でのプルトニウムは MOX燃料とする.または核燃料サイクルで利用するという研究がこれまで40年間以上続けられてきていますが,こちらの計画の見通しは現在はまだたっていないようです[2]

核種変換技術についての補足:

核種変換の技術というと名前はなかなか難しいのですが,原子核の種類を変更するという技術です.核分裂の技術はその一種です.これが自由にできるとなると原子の種類が変更できるすごい技術で,人類はこの技術を数千年も追い求めて,化学という分野を作りました.たとえば,鉛を金に変換する技術も核種変換技術ですが,しかし,まだ大量の放射性廃棄物を実用的に処理できる技術はないようです.日本ではオメガ計画[3]というプロジェクトがあります.


次回

放射性廃棄物は基本的には長期間保存して放射線が弱くなるのを待つ以外には安全にする決め手がないようです.次回はその第一段階,(最終の前の)中間貯蔵についてです.

参考文献

  1. 電気事業連合会, 原子力発電について: ガラス固化体, 2014, (accessed 2014-12-21(Sun))
  2. 東京新聞, 45年で10兆円投入.核燃サイクル事業めどなく, (accessed 2014-10-04)
  3. Wikipedia ja, オメガ計画, , (accessed 2015-3-28)

「最終処分の話をしようや (3): 最終処分とは? 放射性廃棄物の処分方法」への1件のフィードバック

  1. 再稼働の条件に、建屋内プールでの使用済核燃料保管を禁止すべきだと思う。福島原発事故の結果から当然対策をとるべき。

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