最終処分の話をしようや (2): 最終処分とは? 放射性廃棄物とは?

最終処分とは

最終処分は,放射性廃棄物を周辺の環境や人体に影響のないように放射性廃棄物の毒性が低下するまで管理,保管することです.まず,放射性廃棄物の種類とそれがどこからでてくるのかについて話し,そしてどのようにそれを処分するのかについて話をしていきます.

放射性廃棄物について

それが放射性廃棄物かどうかを決める基準として,クリアランス制度があります.それは特定の測定条件で 10 μSv/y の線量当量を越えるかどうかで決まります.この条件を越えるものが放射性廃棄物とされます.またその枠内で,放射性核種毎に基準値(ベクレル値)が決められています. ここで勉強会では 10 μSv/y 以上かどうかで廃棄物としては決まるのに,それにまた放射性核種毎に基準値があるというのは,基準がいくつもあるという意味か?という質問がありました.放射能核種毎の基準というのは,放射能核種の濃度を示すものであって,人に対する影響を示す指標となる線量値ではありません.年間線量 10 μSv/yの枠内で,規定された核種毎にそれぞれの放射能濃度が規制されているということです.そして,その基準を超える核種が一つでもあると,それは放射性廃棄物として取り扱われます.ただし,この説明は素人にはなかなか難しいと思います.クリアランス制度の基準によって,放射性廃棄物かどうかが判断され,その基準以下のものは市場でリサイクルも可能ということが1つのポイントです.

(訂正注: 2018-4-21(Sat) この条件の値を間違えていましたので訂正です。参考 https://www.iaea.org/sites/default/files/42302683544.PDF,また,4 GBq/t (alpha),12 GBq/t (beta/gamma) の基準はhttps://ukinventory.nda.gov.uk/wp-content/uploads/sites/2/2014/01/Fact-sheet-radioactive-wastes.pdf を参照。)

やまうちメモ

やまうちは原子力発電所から出てきて,放射線を出すものは全て放射性廃棄物であると誤解していました.この放射性廃棄物かどうかの基準値そのものの意味,つまり,放射能の単位のベクレルと放射線量の単位のシーベルト,また放射能と放射線の違いについて別枠にやまうちが調べたことを豆知識としてまとめておきます(FIXME: 後の記事が up されたらここからリンクを作成).


放射性廃棄物の分類

放射性廃棄物は,以下の3つに分類されます.

  • 高レベル (TRU廃棄物,使用済み核燃料など)
  • 中レベル (あまりこの種の廃棄物はない)
  • 低レベル

ドイツでは最終処分の都合から,基本的に熱を発生するかどうかで決めています.TRU廃棄物というのはウランの原子番号を越える超ウラン(TRans-Uranium)元素で,主に原子炉を稼動すると生成されるものです.

放射性廃棄物の発生源

高レベル放射性廃棄物(+TRU廃棄物)の発生源は

  • 使用済み核燃料
  • 再処理によって発生する廃液 (ガラス固化体)

などがあります. 低・中レベル放射性廃棄物の発生源には以下のようなものがあります.

  • 原子力発電所
  • 廃炉作業
  • 核燃料加工工場
  • 使用済み核燃料再処理施設
  • (ウラン鉱山,濃縮工場)(採鉱現地)
  • 医療機関
  • 産業工場
  • 研究開発機関,その他

原子力発電所は稼働中か停止中かにかかわりなく,保守作業をすると放射性廃棄物が排出されます.作業員の服などがそうです.医療や産業界でも,放射性物質が使用されるので,そこからも発生します. ドイツでは,すべての放射性廃棄物が危険物扱いとして規制,管理されていますが,日本では上記のリストの下 3 項目はまだ規制されていません.ですから,いつ,どこで,どう輸送され,保管されているのかはよくわからないということです.

やまうちメモ

やまうち個人の意見になりますが,できれば下3項目の放射性物質も,日本でもドイツ同様に危険物として何らかの管理体制を入れて欲しいと思います. また,クリアランス制度で 10mSv/y が放射性廃棄物になるか,普通にリサイクルして良いのかの基準でしたが,これが安全かどうかということはよくわからないことも個人的には注意すべきだと思いました.9.9mSv/y の鉄がリサイクルされて建物や家電に使用されてもこの基準からすれば合法です.実際,「鉄 放射線 スクラップ」などで検索するといくつかのニュースがみつかりますが,それらの中には合法とされるものもあるはずです.今回の記事ではこのクリアランス制度の基準の安全性については調査不足ですが,基準を通って市場に出てくるものはあるということは注意しておきたいと思います.


次回

今回は放射性廃棄物というものがどのような基準で決められているのかについて考えました.次回は放射性廃棄物とされたものはどのように処分されるのかの現状について考えていきたいと思います.

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