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フクシマ原発事故15周年を機に寄せられたフクシマ出身の女性二人のメッセージ

今年も、3.11を前に武藤類子氏と森松明希子氏から寄せられたメッセージをお届けします。

このメッセージは、ドイツ語、フランス語、英語にそれぞれ翻訳されて公開されます。

原発事故15年後の福島

武藤類子

福島県三春町在住、福島原発告訴団団長

東電福島原発事故から15年。現在の福島では、復興の物語の中で、事故の被害や避難者、事故後に起きている様々な問題が見えなくされ、無いものとされつつある。

 2025年3月5日、最高裁判所は東電旧経営陣たちの原発事故の責任を問う刑事裁判の上告を棄却し、彼らの無罪が確定した。夥しい量の放射性物質を環境にまき散らし、今も人の住めない土地と故郷に帰れない人々を大量に生んだ原発事故の刑事責任は、誰も取らないことになった。2022年の福島原発事故関連の4件の損害賠償裁判で最高裁が「国の責任はない」とした判決後、ほとんどの損害賠償裁判が最高裁の判決に倣い国の責任を否定している。東電刑事裁判をはじめ、東電株主代表訴訟の控訴審(1審の東電旧経営陣に13兆円を支払う判決が賠償責任ゼロになった)、子どもたちの被ばく避ける権利を闘うこども脱被ばく裁判、避難住宅追い出し裁判なども同じように影響を受けている。

2015年から始まった、福島の復興の加速化を謳う福島イノベーション・コースト構想には、毎年100億円単位の復興予算がつぎ込まれ、最先端技術の企業が福島県浜通りを中心に事業を展開し、その総数が今年で433件となっている。浪江町に研究都市を造り、福島のイノベーション・コースト構想の司令塔となるF-REI(福島国際研究教育機構)は、最初の7年間で1000億円の予算とし、ロボット、農林水産、エネルギー、放射線科学、原子力災害に関連するデータや知見の集積を主な研究として、世界から50の研究者チームを招聘しようとしている。その家族のための学校、保育所などが整備されている。一方で早々に、ロボット関連企業、食品加工工場やスポーツウェアの縫製工場、断熱材製造業の工場、太陽光発電システム製造会社の工場、食堂などが経営破綻している。被害者の望む復興とは乖離した惨事便乗型の資本主義は、被災地の助けになるとは思えない。植民地化していくだけではないだろうか。

汚染水の海洋投棄や汚染土の再利用などの放射性物質の再拡散が福島復興と廃炉のためにと行われている。事故後に心身の疾患を病んだ住民は多く亡くなった人もいるが、数字に表れているのは、福島県が行なう唯一の健康調査で発見された甲状腺がん(当時未成年だった県民対象)だけで、それについても原発事故との関連は否定されたままだ。政府の各省庁や福島県などが広告代理店や大手メディアなどに発注する国策のプロパガンダが、特に若い人に向けて盛んに行われ、被害者の不安や疑問を封じ込め、住民の健康や人権がますます蔑ろにされている。

2025年にはエネルギー基本計画が改定され原発が主要な電源として位置付けられた。各地で止まっていた原発の再稼働が進められている。隣県の宮城県女川原発が2024年に再稼働され、新潟県の柏崎刈羽原発の再稼働を新潟県知事と県議会が容認した。隣接する福島県は再び原発事故による被ばくの危険に晒される可能性がある。

しかし、抗うことを諦めてはいない人々もいる。2024年には、ジャーナリストの後藤秀典さんの取材で最高裁判事との癒着を明らかにした。このことに衝撃を受けた多くの裁判の原告団や弁護団、支援者が結集し、2024年から最高裁の包囲行動を開催し、司法の独立を訴えている。ALPS処理汚染水の海洋投棄を止めるための裁判を闘ったり、廃炉に関する市民集会や廃炉機構との話し合いを開催している。また、事故時のヨウ素剤配布の事例の冊子[注1]を作成した。

政府や原子力推進勢力のお金と力を使ったブルドーザーのような勢いに対して、小さくてもできることを一つずつ積み重ねていこうと思う。

[注1]「あの日 風しもの町で起きたこと」東京電力・福島第一原子力発電所事故直後の福島県三春町での「安定ヨウ素剤」の配布。 発行:「風しもの村 風しもの町」実行委員会

基本的人権として放射線被ばくのない生を求める

森松明希子                          東日本大震災避難者の会代表                  原発賠償関西訴訟原告団代表

事故直後、私たち一般市民には放射能汚染の情報は知らされず、無用な被ばくを重ねました。空気、水、土壌が汚染される中、私は放射性物質が検出された水を飲むしかなく、生後5ヶ月の乳児に母乳を与え、子どもたちを被ばくさせてしまったことを後から知りました。

多くの核災害被災者が、事故から15年が経過した今現在も被害に苦しんでいます。(ここでは、行政の線引きに関わらず、すべての被害者を含めます。)その理由は、放射能汚染という客観的事実が残存しているからです。そして私は子どもたちにこれ以上、1マイクロシーベルトたりとも無用な被ばくはさせたくないため、今なお避難を続けています。

「万が一にも事故を起こさない」と約束した加害者の側は、事故後、「これくらいの被ばくなら良いだろう」と都合よく基準を緩め、加害者の論理で誰が被害者であるかを一方的に線引きし、被害者同士を分断させました。

私たちは、「被ばくしたくない」「健康を享受したい」という、生命と生存に関わる根本的な権利を侵害されています。この尊厳を踏みにじる行為を決して許してはなりません。

原発問題は基本的人権の問題です。

日本の司法は、国が原発事故後に一方的に緩和した「安全基準」を追認し、最高裁判決以来、避難者が起こした民事訴訟で賠償を勝ち取ることは極めて困難な状況にあります。これは、「無用な被ばくを避ける権利」という人権が、日本の司法の場で尊重されていないことを意味します。

放射線被ばくから免れ健康を享受するという基本的人権(「被ばくからの自由」)を人類の普遍的な権利として確立することによって、全世界の核被害を根絶することが可能となります。それが、私たちが目指すべき未来です。

唯一の戦争被爆国である日本は、第二次世界大戦の終結から80年を迎えました。日本被団協のノーベル平和賞受賞や、ヒバクシャの世界的なスピーチにより「被ばく」に注目が集まる今こそ、広島、長崎、福島を経験した日本は、この「被ばくからの自由」という基本的人権を普遍的な権利として確立すべきオピニオンリーダーとしての役割を果たすべきだと私は考えます。

世界の核被害を訴える人々、例えば、原水爆実験の被害者、ウラン採掘による被ばく被害、核ゴミや汚染水の海洋放出による環境汚染なども、広い意味では核被害の拡散にあたります。福島を経験した私たちは、軍事利用・民間利用を問わず、誰もが核被害者になりうることを知っています。私たちはこうした世界中の全ての核被害者とつながり、この「被ばくからの自由」という普遍的な権利を確立すべきだと考えます。

放射線被ばくの脅威から免れる権利は、地球上の全ての人が有する基本的人権です。この普遍的な権利の確立のために、福島核災被害者である私も、声を上げ、闘い続ける決意を新たにしています。

このメッセージを読んでくださっている皆さまとともに、無用な被ばくを避け、自らの命や健康に対する権利を手放さないこと、被ばくするかしないかは私たち一人ひとりにそれを決める権利があること、その命に関わる基本的人権の確立のために、これからもともに歩んで参りたいと思います。ともに声を上げ続け、この権利を勝ち取りましょう。

フクシマ原発事故から15年

「原発事故の歴史が書き換えられないように」

Sayonara Nukes Berlinがフクシマ原発事故から15周年を記念し制作した小冊子が完成しました!

それぞれの分野で活躍する、今のフクシマとそれをめぐる数々の問題を語るのに欠かせない重要な5人の方々に執筆していただき、それをドイツ語に訳しました。

ドイツ語版のプリントバージョンをご希望の方は、希望数と送り先を書いて、SNBまでご連絡ください。できれば郵送料を負担してくださると助かります(もちろんご寄付はいつでも大歓迎です!)。ちなみに、ドイツ語版のPDFをお求めの場合は、下記のリンクからどうぞ:

日本語読者の方たちのために、執筆者のオリジナル原稿をドイツ語版のレイアウトデザインに基づいてレイアウトし直し、PDFでダウンロードしていただけるようにしました。

どうぞ、下記からダウンロードするか、ウェブ上でお読みください。

15年経った今も、苛酷なフクシマ原発事故は収束からは程遠い状態です。詳しい情報が入りにくくなっている今、あらゆる角度から今も続く問題点をドイツ語圏の皆様にも知っていただくために、制作しました。お知り合い、お友達とも情報を共有してください。

なお、今年のかざぐるまデモは、チェルノブイリ事故から40年であることから、4月18日(土)にブランデンブルク門/ベルリンで行うことになりました。呼び掛け文、フライヤーは後日このサイトでも公開いたします。皆さんもどうぞ参加してください!

関西訴訟結審 ‐ 原告団長・  森松明希子氏による最終陳述

©Takezo Takahashi

原発事故で関西に避難してきた人達が、2013年に国と東京電力に対し損害賠償請求を求めた訴訟が始まってから12年。これまで避難者による約1万人を含む原告団による訴訟は30ほどあったが、国と東電の責任を認めた判決が控訴審で出されたのは3件(2020年の「生業(なりわい)を返せ、地域を返せ!」訴訟、2021年の千葉と愛媛の訴訟)、しかし最高裁はその後2022年6月に、事故は予見できなかったものとみなして国の賠償責任を否定し、4件(前述の訴訟3件と群馬訴訟)で原告の訴えを却下した。

その一連の「原発事故避難者による訴訟」の中で、この「関西訴訟」は「しんがり」裁判でもあり、2013年9月17日に訴訟を起こしてから実に12年を経て、やっとこの2025年12月24日に最終口頭弁論・結審を迎えることとなった。この間、原告全員である79の家族が尋問を受けた。それまでの裁判では、原告全員ではなくて限られた人が尋問を受けるだけだったが、ここで大阪地裁の方法は違っていた。原告の尋問は月一度のペースで2025年9月まで行われてきた。もう一つ異色だったのは、長く続く裁判では裁判官が交代して変わっていくことが多いのだが、この関西訴訟ではずっと同じ裁判官が続けたことである。それだけに、この判決がどういうものになるのか、市民の注目を集めている。

結審は2025年12月24日に行われ、判決期日は2026年9月2日と定められた。

この日に関西訴訟の原告団長、森松明希子氏が心打つ最終陳述をしたが、そのテキストをここに紹介する。


最終意見陳述書(森松明希子)

原告番号1−1の森松明希子です。

最終意見陳述を法廷で述べる機会をいただき、ありがとうございます。

1.家族の分断と平穏生活の喪失

    福島県郡山市から大阪市に2人の子どもを連れて、今日も母子避難を続けています。

    夫を福島に残し、家族バラバラの生活も14年9ケ月となります。

    震災当時0歳と3歳だった子どもたちも、今は15歳と17歳になりました。

    中学3年生、高校3年生という多感な時期を迎えており、父親は健在であるにもかかわらず、人生について様々な相談やアドバイスを求めたくても子どもたちのそばに居られず、この14年間、子どもの成長を夫は毎日見ることができず、子育ての苦楽を私たち夫婦は共有することができませんでした。子どもたちは、「家族が、一堂に集まり、楽しく会話をしながらリラックスして過ごす」という平穏な時間、すなわち家族団欒を一切合切失うことになりました。これは原発事故による明白な被害です。

    2. 「被ばく」を避けたいという切実な願い

    それでも、私たちが母子避難を続けているのは、2011年3月11日に発生した東京電力福島第一原子力発電所の事故により福島県郡山市はもとより広範囲に放射性物質が降り注いだからです。放射能汚染がそこに「ある」から避難を続けるのです。本来しなくてよい「被ばく」を避けたいから、そこから避難し続けているのです。

    そして、「強制避難」ではないからこそ、苦肉の策としての「母子避難」を敢行しているのです。強制避難区域の外側からも含め、現在わかっているだけでも2万6,597人(復興庁2025年12月5日「全国の避難者数」)が今なお避難を続けています。これほど多くの人々が実際に避難を続けていても、国はこの14年間、避難者を保護する制度や施策をほぼ何も実施して来ませんでした。

    私たちは「自主避難」ではなく「自力避難」を強いられ、苦境に立たされて来ました。原因は、国策による原発事故の放射能汚染だと誰が見ても因果関係が明確であるにもかかわらず、原発避難の統計や母子避難の実態を正確に把握する努力もせず、差別や誹謗中傷の標的として晒され続けてきました。

    3. 被ばく強要という「自己決定権」の侵害

    私は、パニックを起こして避難をしたわけではありません。

    2011年3月11日、その日に存在していた基準・規範に基づいて避難することを判断し、客観的な汚染の事実と照らし合わせて避難を続けたいと申し上げているのです。

    通常一般人の公衆被ばく限度が年間1ミリシーベルトだったものを、3.11後に年間20ミリシーベルトに引き上げて(ゆるめて)、それで大丈夫と言われても、納得も許容もできるはずがありません。なぜ福島だけ高い被ばく線量を受け入れなければならないのでしょうか?これは、明らかな差別です。

    もう一点、「自主避難」に対する誤った世論があります。

    それは、自主避難者は避難するか、しないかの選択肢があたかもあるかのように捉えられています。避難の選択をしたのは自由意思に基づいた自己責任であり、自分勝手に避難したのだから被害はないかのように理解されている点です。

    これは明らかに誤りです。私たちは、避難するか、しないか、という選択肢を与えられたのではなく、「放射能に被ばくし続けるか」、それとも「被ばくが嫌なら避難するか」という、どちらも選びたくない二つの苦痛を、平穏な生活の場で、強制的に選ばされたのです。

    その被害について、何ひとつ触れずに、加害者が決めた「これくらいの被ばくなら大丈夫だろう」「我慢せよ」という被害の押し付けに甘んじるつもりは毛頭ありません。

    4. 「広報」は真実を教えてくれない

    本人尋問の中で、被告東京電力は、毎回避難元の「広報誌」を提示して「広報を見ていないのか?」「安全だと書いてある」と言わんばかりの主張を繰り返しました。

    私は裁判官の皆さんにお聞きしたいです。

    「祭り」や「入学式」を「広報」で宣伝すれば、放射能汚染の事実は無くなるのでしょうか? 自主避難区域には様々な理由でその地にとどまっている住民の方々がいます。人が住んでいれば花見もすれば夏祭りで花火も打ち上げます。「がんばろう東北」の掛け声と莫大な復興予算が投入される中、大きなイベントも開催し、あたかも「復興」したと盛り上げることはできるでしょう。

    「広報」は国や行政が税金を投入して国民(市民)に知らせたいことを知らせるものです。私は「プロパガンダ」や「大本営発表」という言葉も知っています。歴史上どういう役割を果たしてきたかも理解しています。国や行政が、国民に知らせたいことだけを伝える「広報」は、私たち避難者の知りたい真実を何一つ与えてくれるものではありませんでした。

    一方で、私の避難元の郡山市では午前・午後通しで時間制限なく屋外で運動会が再開されたのは2018年になってからです。(原発事故からは実に7年も経ってからです。)

    避難した当時、100万人に1人か2人しかかからないと言われた小児甲状腺がんは、約37万人しかいない福島県の当時18歳未満だった子どもたちの県民健康調査の結果では、現在400人近くが発症しており、誰の目にも多発の事実があります。放射能は県境では止まりませんが、公費で大規模に健康調査がされているのは福島県だけです。

    そして、当時、6歳から16歳までだった子どもたちが、東京電力を被告として小児甲状腺がんにかかったのは福島原発事故が原因だと集団訴訟を提起しています。そこでの子どもたちの証言を聞くと、「何も知らずに無防備に雨風に当たった」「親には外に出ないように言われたが友達と遊びに出てしまった」と被ばくに対して脆弱な子どもたちが無防備に放射線被ばくに晒されつづけ、それを後悔しているという事実が証言されています。

    5. 裁判官への問いかけ

    裁判官の皆さん、具体的な生活者の視点で、1人の人間として、想像してみてほしいのです。外で運動会もできないようなところで子育てをしたいと、あなたは本気で思いますか?

    あなた方にお子さんがいらっしゃるかどうか、私は知りません。ですが、あなた方にも子どもだった時代はあったはずです。運動会をはじめ、外遊びの時間を制限されながらのびのびと自由に遊びに出掛けられなかった記憶はありますか?食べ物に関して、触るものに関して、いちいち、被ばくしないだろうか、健康被害は出ないだろうかと心配して過ごす毎日を送ることが、どれほどの負担になるか、考えたことはありますか?

    ましてや、毎日飲む水道水に「放射性物質が検出された」と報道されて、その水を飲み続けることが、あなたにはできるのか? ご自身に置き換えて、そして育ててもらった親の顔を想像して、考えてみてください。

    親であれば誰しも子どもに1マイクロシーベルトたりとも無駄に被ばくはさせたくないと思うのが通常一般人の合理的意思ではないでしょうか?

    放射線量の寡多は問題ではなく、被ばくするかしないか、が問題なのです。

    被ばくするかしないかは、私が決める。それが憲法で保障された「自己決定権」を行使できる状況ではないでしょうか?

    6. 絶望を終わらせてほしい

    私は闇雲に避難したい、避難を続けたいと言っているわけではないのです。

    何度でも繰り返します。

    放射線被ばくから免れ健康を享受する権利は、人の命や健康に関わる最も大切な基本的人権にほかなりません。

    誰にでも、等しく認められなければいけないと、私は思います。

    少しも被ばくをしたくないと思うことは、人として当然のことであり、誰もが平等に認められるべきことです。

    また、これから先、将来のある子どもたちに、健康被害の可能性のリスクを少しでも低減させたいと思うことは、親として当然の心理であり、子どもの健やかな成長を願わない親は一人としていないと思うのです。

    そこには、一点のくもりもなく、放射線被ばくの恐怖、健康不安があってはならないと思うのです。

    裁判で、客観的な汚染の事実をいくら提示しても、事故を矮小化したい国と東京電力が、加害者主導で賠償基準を勝手に決めて、そのまま裁判所の賠償認定にも影響を与えるということでは、とても公平な裁判所とは言えないと思います。

    避難するためには費用もかかります。東京電力福島第一原発事故による避難の特徴的な形態となった母子避難世帯の場合、居所を2箇所に分けて二重に生活費もかかります。家族再会の費用も自力で負担しなければなりません。父子再会の費用を抑えれば、それだけ子どもが親と会えない精神的負担を強いられます。原発事故がなければ、誰も好きこのんで家族バラバラに避難することなどしません。

    そしてこれらはすべて、原発事故による放射線被ばくから免れるために、つまり、被ばく防御のための苦肉の策としての私たち家族の最善であり、明らかに原発被害なのです。

    2022年6月17日に最高裁判所が国の責任を認めないという論理的にも説得力を欠く不当判決を言い渡しました。それ以降、被害実態にそぐわない不当に矮小化された損害認定が下級審でも量産されています。

    しかし、司法がいかなる判断を下そうとも、原発事故による放射能汚染を原因とする私たち被害者の被害が消えて無くなるわけではありません。私は今日も避難を続ける必要があり、苦渋の決断で、今日もまた避難を続けています。 つまり原発事故による損害は間断なく、今この瞬間もこうむり続けているのです。

    不当な判決が出されるたびに、私は司法からも「絶望」を与えられ続けています。

    そして、無用な被ばくを避ける権利を人類が手放す「危機感」しか感じられないでいます。

    松本展幸裁判長、右陪席の寺田幸平裁判官、左陪席の清水康平裁判官、どうか、これ以上、原発被害者に「絶望」を与えないでください。

    放射線被ばくから免れ健康を享受する権利を奪わないでください。

    人の命や健康よりも大切にされなければならないものはあるのでしょうか?

    私は放射線被ばくから免れ、命を守る行為が原則であり、そのことが最優先で尊重される判決を心から希望します。

    私からは以上です。

    フクシマ原発事故14周年を機に寄せられたフクシマ出身の女性二人のメッセージ

    2025年 世界の皆さまへ

    揺れ動く世界の情勢に、困惑するばかりの2025年の始まりですが、世界中で脱原発を目指して頑張っておられる皆さまに、心より感謝いたします。

    私は、昨年夏に、帰還困難区域に入る機会がありました。過酷な避難の途中で50人以上の患者さんが亡くなった病院は、鬱蒼と繁った樹木と草に覆われていました。老人ホームには、ベッドや紙おむつ、薬、書類などが散乱し、大慌てで避難をしていったそのままの様子が見て取れました。3月11日の食事の献立がホワイトボードに書き残されていました。小学校では小さな木の机の一つ一つに、辞書が置かれていました。ランドセルも靴も絵の具の筆を洗うバケツも、倒れた自転車もヘルメットも、みな置き去りにされたままでした。物音はなく蝉の声だけがあたりを包んでいました。13年前には確かにここには人の暮らしがありました。でも、今は誰もいません。今もそんな場所が存在します。

    避難解除された場所に、戻ってくる方々は極少数です。放置せざるを得ない住宅は次々に解体されています。江戸時代に建てられた文化財のような門や蔵などが、解体されているのを見ました。そのすぐそばには災害復興住宅があり、県外からの移住者の子どもたちも住んでいます。住民の方によると、家の中でも事故前の5~10倍の0.3μSv/hだそうです。住宅のフェンスの向こう側は帰還困難区域です。このような住環境は、決して安全とは言えません。

     一方、日本の第7次エネルギー基本計画案では、「原発依存度を減らす」という文言を削除し、原発回帰が色濃く見えています。今も終わらない福島原発事故を経験し、そして昨年の能登半島地震で、もし原発事故が起きたら避難も自宅待機もできないことが明らかになり、それでも尚、原子力をエネルギーとして選択する愚かさが、私には理解できません。

    不十分な賠償と責任追及のために沢山の被害者が起こしている裁判は、2022年に最高裁が国の責任を認めない判決を出しました。その後、その最高裁判所判事と東電の癒着がジャーナリストによって明らかになっています。日本の司法はかなり危機的な状況にあります。最高裁判例がその後の下級審の判決に踏襲されるなど、原発事故被害者による裁判は厳しい状況に置かれています

    0.7グラムの核燃料デブリの取り出しが成功したと報道されていますが、何度も失敗があり、むしろ高線量の放射能の下での作業の過酷さと、テレスコープ型のデブリ取り出し装置の組み立て作業に東電社員が立ち会い確認をしなかったなど、東電の作業管理の杜撰さを露呈しました。誰もが2051年の廃炉の実現などありえないことを感じているにも関わらず、放射能の減衰期間を置くなどの廃炉のロードマップの見直しはされません。

    汚染水を海洋投棄することに強引に着手した東電と国は、次は「復興再生利用」と謳った汚染土の拡散を本格的に推し進めようとしています。特に若い人々に向けて放射能の安全神話と、政府が認めた「科学的」が正しいものだと刷り込むための宣伝事業を繰り広げています。

    誰もいなくなった海岸線の土地に、「復興」の掛け声とともに、被害者に本当に必要なものなのかも分からない最先端技術の企業や研究所が、多額の復興予算を使い林立しています。

    原発事故とは、暮らしも、故郷も、人権も踏みにじるものです。事故から14年の現状を目にすると、福島はどうなっていくのだろうと途方に暮れるばかりです。

    でも、冬の寒さが過ぎ、春の兆しがそこまで来ています。こんな時代だからこそ、心にきれいなものを沢山詰め込み、真実を見抜く涼やかな目を持ちたいです。そして今日も脱原発を粘り強く闘う仲間が世界にはたくさんいることを心強く思いながら、私もできることを続けていきたいと思います。

    武藤類子

    福島原発告訴団(刑事裁判)代表

    ひだんれん(原発事故被害者団体連絡会)代表

    このメッセージは5か国語(フランス語、ドイツ語、イタリア語、ルーマニア語)に翻訳され、『よそものネット』のウェブサイトに掲載されています。武藤類子さんからのメッセージ(6カ国語) – yosomono-net

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    東電福島原子力惨禍における放射線被ばく被害を避けるため、国内避難を続けている森松明希子と申します。


    2011 年3月11日に発生した大震災及びそれに伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故から14 年が経過しました。しかし事故は収束からはほど遠く、世界につながる海、空気、陸地を汚染し続けています。
    事故を起こした原子力発電所が「アンダー・コントロール」とは言い難く、この国のリーダーが、誰一人として、その事実を認めていないことに対して憤りを覚えます。14 年経った今なお、放射線被ばくを避けて多くの人々が汚染地から避難を続けている現状があります。政府(復興庁)に登録した避難者数は、分かっているだけでおよそ2万
    9,000 人、全国47都道府県全てに今なお存在し(2024 年12 月6日復興庁『全国の避難者数』)、政府の保護や救済を切望し続けています。しかし、発災直後から正確な避難者数が日本政府によって把握されたことは一度もなく、実際には、これより多くの人々が避難を余儀なくされていますが、救済されることはなく苦難の中に今もあります。また、現状を把握しようとしない政府からの支援や保護の措置がないため、したくても避難できない人々が多数存在しています。

    私には2人の子どもがいます。震災当時、5ヶ月の赤ん坊と3歳の幼児でした。この14年間、私の夫(子どもたちの父親)は福島県郡山市に、私と子どもたちは大阪市に、離ればなれに住んでいます。このように、強制避難区域に指定されなかった汚染地域に住む人々は、被ばくに脆弱な子どもを守るため、母子だけで線源(汚染地)から離れるという苦肉の策を余儀なくされ、今現在も、多数の母子避難をはじめとする自力避難者が存在しています。


    避難できた人も、そうでない人も、東電福島第一原子力発電所事故に由来する放射能汚染から身を守る必要があります。そして、「避難すること」は被ばくから免れ健康を享受するための人として当然の行為です。しかし、日本では、避難者は差別され、いじめの対象になり、「風評加害者」などとレッテルを貼られ、言論の自由まで奪われるという二次被害まで受け続けるという人権侵害の惨状があります。

    原子力を推進し、核を手放さないということは、一次的には、望まない被ばくを余儀なくされることであり、二次被害としては、安全な場所に避難するという自らの身を守る権利も剥奪され、さらにそのことに対して抗議するための言論の自由という民主主義の根幹をなす権利をも奪われるということに他なりません。


    また、この問題は、福島の人々だけの問題ではないということを強く訴えたいです。核被害の脅威にさらされた時、あなたは被ばくを強いる側に立つのか、それとも被ばくから人々の命と健康を守る側に立つのか、という問いを世界の皆様と共有したいです。

    国策で、原子力発電が進められれば、逃げることは簡単に許されず、日本と同じように、原子力を肯定するために、核との共存が可能であると、国は喧伝するでしょう。それは欺瞞でしかありません。

    2025 年は、第2次世界大戦終了から80年を迎えます。昨年は、日本被団協がノーベル平和賞を受賞し、ヒバクシャが世界の舞台でスピーチしたことで「被ばく」に関しても注目されています。今こそ、世界の核被害を訴える人々とつながって、放射線被ばくから免れ命を守る行為が原則であり、それを世界で普遍的な共通認識にすべきと考えます。この普遍的な権利の確立のために福島核災被害者である私もともに声を上げ、闘い続けようと決意も新たにしています。世界中の皆さま、ともに声を上げ続けていきましょう。

    2025 年 3月11日

    森松明希子
    原発賠償関西訴訟原告団代表
    原発被害者訴訟原告団全国連絡会共同代表

    汚染水海洋放出への抗議メッセージ

    SNBもメンバーになっている在外邦人の脱原発ネットワーク「よそものネット」で、現在日本政府が計画している放射能汚染水海洋放出に対する抗議声明を日・英・独・仏4か国語で発信しましたhttps://yosomono-net.jimdofree.com/

    フクシマ原発事故/日本:放射能汚染水を海へ放出?

    日本は、福島第一原発事故から出る、フィルター処理後もまだ放射能汚染されている水を希釈して2023年の夏にも海へ放出しようとしています。

    「フクシマ原発事故」とは?

    2011年3月11日の大地震と津波の発生後、福島第一原発で水素爆発と炉心溶融を伴う深刻な原子力事故が起こりました。これにより大量の放射性物質が環境に放出され、大気、土壌、水、食物を海陸で汚染し、それが今も続いています。

    12年以上経った今も、当時発令された原子力緊急事態宣言は出されたままで、2万人以上の人が公に避難者として登録されています。子ども、若者、妊婦を含む近隣の住民たちには年間20ミリシーベルトという被ばく限度線量が強いられていますが、これは法律で民間人に許されている最大被ばく線量の20倍で、原発労働者の基準値と同じです。

    なにを海に放出?

    事故を起こした原子炉は、冷却回路が壊れていてもずっと水で冷却する必要があるため、強度に汚染した冷却水がどんどん溜まり、それが漏れ出てくる地下水と雨水と混ざって日々大量の汚染水に膨れ上がっています。今では130万トンもの量となって約千基ものタンクで福一の敷地で保管されています。この水を日本はフィルター設備で処理し、希釈してから海に放出しようとしています。

    日本政府の言い分

    放射性核種の含まれた水はALPSというフィルター設備で「問題のないレベル」まで処理される。残るのは主に水から分離が難しいトリチウムだけである。トリチウム水は世界のどの原発からも放出されている。水に含まれている放射性核種はすべてそれぞれの濃度限度を下回るまで処理され、さらに放出前に希釈される。国際原子力機関IAEAからも承認を得た。東電によればタンクを置く場所がもうすぐなくなる、こう主張しています。

    問題点

    福島第一に保管されている水は、溶けた燃料棒に触れた液体の放射性廃棄物であり、通常の原子炉の運転で放出されるトリチウム水とは比べることはできません。ALPSは放射性核種すべてを取り除けるわけではありません。水素の同位元素であるトリチウムだけが処理後に残る唯一の核種かのように言われていますが、実際にはトリチウムのほか、セシウム134および137、ストロンチウム90、コバルト60、炭素14、ヨウ素129などが含まれています。

    生態系および食物連鎖におけるトリチウムの影響はしかし、調査が不十分なほか、わずかな調査結果も考慮されていません。どの量からは何が「問題ない」と、誰が判断するのでしょうか? 放射性物質の環境への放出に関し、日本政府はそれぞれの核種に対する告示濃度限度を定めました。これは、人が70年にわたり毎日その濃度の水を2リットル飲み続けた場合、1年間で平均1ミリシーベルト被ばくする、という濃度です。ということは、長期にわたる影響評価はここでは全く考慮されていないことになります。また、個々の放射性核種がどのように海水で変化し、どのように食物連鎖で濃縮され、どのような害を及ぼす可能性があるかについての研究も不十分です。濃度がいくら希釈されても、トリチウムは年間22兆ベクレル/ℓ分が海に放出されることになります。希釈されてもばらまかれても、量に変わりはありません。

    トリチウムの半減期:12年、ストロンチウム90:28.8年、炭素14:5730年、ヨウ素129:1570万年。

    予防の原則

    放射線防護の観点から言えば、福島第一の汚染水は厳重な管理のもと、タンクに保管されたままであるべきです。疑義がある場合には予防の原則に則るべきです!

    ことに心配されているのが近隣の港で捕れる魚から検出されるセシウム134/137 が増加している事実です。2023年6月には、クロソイでなんと18,000ベクレル/キロが測定されました。汚染水の漏洩が続いている可能性があります。これを徹底的に調査し対策をとらずに汚染水を海洋放出するなどは無責任です。

    「心の除染」と「風評被害」

    市民を放射能によるさらなる危険から守る代わりに日本政府は「少しくらいの放射能は大丈夫、それより不安の方が問題だ」というおとぎ話を広めています。その不安克服のため彼らは、厳重な健康調査や放射能汚染の計測ではなく、「心の除染」という大規模な宣伝キャンペーンで、原発推進派の科学者の意見だけを集めた偏った結論を繰り返しています。人々の正当な恐れを「放射能パニック」、経済に害を及ぼす「風評被害」だとしているのです。

    原子力推進のためのIAEA

    1957年に「原子力の平和利用」というモットーの下原子力エネルギー推進を目的に作られた国際原子力機関の任務は、放射線防護ではありません。それよりどこまで放射線リスクを「軽微であり無視できる」と呼べるかの規定を作っています。IAEAの影響評価報告書には、海の生態系への長期影響は考慮されていません。どうして彼らの報告書が「認可」だと言えるでしょうか?

    去るもの日々疎し?

    近隣国、南太平洋諸国は当然ながらこの日本の計画に反対しています。国連の専門家も人体の健康と環境に及ぶ可能性のある危険について懸念を表明しています。一度海洋放出を始めてしまえば、将来も汚染水の海洋投棄を許す前例を作ることになります。日本は、すでにあらゆる環境汚染の影響を受けている海、地球のほかのどの海洋とも繋がっている海を30年以上にわたってさらに汚染しようというのです。海は汚染物の廃棄場ではありません。汚染をできるだけ限られた場所に閉じ込める努力をする代わりに、それを散りばめようとするなど、無責任極まりありません。しかし、東電も日本政府も、大量の水タンクなど、事故がもたらした目に見える結果を、汚染水を海に放出することでできるだけ見えなくしてしまおうというのです。決してそれを許してはなりません!

    従って以下のことを求めます:

    • フクシマであろうがどこであろうが、放射能汚染された水を海洋放出してはならない!
    • 世界各地の原子力施設に対し、生態系変化と人体への健康への影響をモニタリング・分析する、独立した団体による管理・研究システムの設立
    • 研究・モニタリング結果の透明性高い開示

    2023年7月23日付

    出典:

    http://oshidori-makoken.com/

    https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning/committee/fukushimahyougikai/2021/23/shiryou_04_2.pdf

    https://www.pref.fukushima.lg.jp/site/portal-de/de04-02.html

    https://www.ohchr.org/en/press-releases/2021/04/japan-un-experts-say-deeply-disappointed-decision-discharge-fukushima-water

    https://www.iaea.org/sites/default/files/iaea_comprehensive_alps_report.pdf

     

    おしどりマコ&ケンZoom講演会 私たちが知っておくべきフクシマの見えにくい事実

     

     

     

     

     

    フクシマ原発事故から12

    私たちが知っておくべきフクシマの見えにくい事実

    毎年恒例、原発事故以来、東電の記者会見に通い取材しつづけるのおしどりマコ&ケンさんのZoom講演会を開催します。

    参加には事前登録が必要です。登録先はこちら

    開催日時 2023年6月18日(日)

    東京 21:00   Berlin/Madrid/Paris 14:00 / London 13:00  Montréal/New York 08:00

    2023年3月で12周年を迎えたフクシマ原発事故の影響や現在の状況に関する報告、調査は日々少なくなるだけでなく、覆い隠されどんどん見えなくなっています。その中で汚染水海洋放出、汚染土壌の「再利用」などは市民の理解を得ないまま「粛々と」進められようとしており、透明な調査や話し合いの代わりに「風評被害払拭」対策として広告宣伝に膨大な税金が使われています。

    事故以来、東電記者会見に通い続け、作業員や市民と交流し、調査・分析を続けているおしどりマコ・ケンの二人が報告する恒例オンライン講演会「フクシマの見えにくい事実で私たちが知っておくべきこと」、ぜひご参加ください!

    プロフィール

    マコとケンの夫婦コンビ。 漫才協会/落語協会/保健物理学会会員。 東京電力福島第一原子力発電所事故(東日本大震災)後、  随時行われている東京電力の記者会見、様々な省庁、 地方自治体の会見、議会・検討会・学会・シンホシウム・被害者による各地の裁判を取材。 また現地にも頻繁に足を運び取材し、その模様を様々な媒体で公開している。 2016年「平和・協同シャーナリスト基金」奨励賞受賞。 http://oshidori-makoken.com

     

    主催:よそものネット

    よそものネットは海外に住む在留邦人による脱原発ネットワークです

    福島の証言が海外でコミックに!「Fukushima 3.11」ドイツ語版

     

    閲覧はこちらのリンクから↓

    Fukushima-3.11_deutsch_web_

     

    このコミック「Fukushima 3.11」はフランスの国立科学研究所CNRSのプロジェクトの枠内で行われたインタビューに応じたよこたすぐる氏の証言をもとに出来上がった作品です。フランス在住の杉田くるみさんがインタビューを行いそれをまとめ、漫画家のダミアン・ヴィダル氏が実際の史実に忠実に研究を重ねコミックに仕立て上げました(オリジナルはフランス語で、英訳もあります)。このコミックはまずTOPOという漫画雑誌の2019年1月/2月号に掲載されました。

    今回杉田さん、ヴィダルさんの許可と、お二人が所属なさっている「遠くの隣人3.11」のご厚意で、ドイツ語翻訳が完成しました。「遠くの隣人3.11」はフクシマ原発事故以来被害者の方々を支援してきているグループで、このコミックを無料で誰にでも読めるように提供してくださっていますが、著作権はもちろんこのお二人にありますので、このコミックをどこかで紹介・公開・拡散なさる場合には、必ず「遠くの隣人3.11」を通じて著者の方に連絡してくださいますよう、お願いします。

     

    『世界のみなさまへ』福島原発告訴団団長・武藤類子さんからのメッセージ

    世界の皆さまへ

    2022年、私たちはロシア・ウクライナ戦争によって核兵器使用の恐怖と、原発は攻撃されれば核兵器になり得ることを再認識せざるを得ませんでした。8月から岸田政権は、GX基本方針などとしての原発再稼働、新増設、リプレース、運転期間の実質延長などの政策を次々に打ち出し、今年2月10日に閣議決定してしまいました。パブリックコメントは非常に短い期間しか募集せず、国民に対する説明・意見交換会も10カ所だけで、それがまだ終了していないのに強引に原発回帰への道を選んだ政府について、憤りを今まで以上に強く感じています。

    福島原発事故は、未だ収束すらしていないし、7つの市町村には帰還困難区域が存在し、数万人の避難者が故郷に帰ることができずにいます。たった12年で事故の反省と教訓として選んだ「原子力の依存を低減する」「原発の運転期間を原則40年とする」「原子力の規制と推進を分ける」という政策を手放し、このような愚かな選択をすることが次の原発事故を準備することになりかねないと不安を感じています。私たちは再度、力をふり絞ってこの暴挙を止めなければなりません。

    裁判の状況を見ても同じことが言えるかもしれません。昨年6月の国の責任を認めなかった避難者訴訟最高裁判決は、4つの裁判のうち3つが高裁判決では国の責任を認めていたのに、それを覆しました。今年1月の東電旧経営陣の刑事裁判控訴審は、現場検証も重要な証人尋問も却下しておきながら、「立証が不十分」と言って「無罪判決」とされました。避難住宅の追い出し裁判では、国際人権法からの避難者の住まいの権利という視点での審理がされませんでした。どの判決も十分な審理を行ったとはいえない納得しがたい判決でした。これは原発回帰の方向性と無関係ではないと感じます。東電刑事裁判は最高裁への上告が決まりました。高裁判決の欺瞞を社会に広め、弁論が開かれるように運動を続けたいと思います。

    もう一つALPS処理汚染水の海洋放出が、今年の春から夏へと迫っています。一旦海洋に流し始めたら、今後何十年も流すことになります。私たちは昨年、環太平洋に住む人々と一緒に国際フォーラムを持つことができました。汚染水が流される先には、海を生きる場とする人々への人権侵害と、海を住処とする生物への命の侵害があります。これは国際的にもますます大きな問題になるでしょう。事故で既に膨大な放射性物質を流しているのに、国と東電が福島の海から意図的にさらに放射性物質を流すことに、私たちはいたたまれない気持ちになります。何とか止めたいと思っています。私たちは、一昨年政府が海洋放出を閣議決定した4月13日近辺に、世界の各地で海洋放出に反対するスタンディングを行うことを呼びかけています。世界の市民が繋がって、汚染水の海洋放出を止めるアクションを一緒に起こしていきましょう。

    今、世界の暗さは一層増しているように感じますが、未来の世代に手渡す世界に、少しでも光が射すように、私たちは決して諦めることなく力を尽くしましょう。

     

    2023311日 福島にて

     

    武藤類子

    福島原発告訴団団長

    http://hidanren.blogspot.com

    http://kokuso-fukusimagenpatu.blogspot.com/p/blog-page_5112.html

     

    武藤類子さんのメッセージは毎年複数の言語に翻訳されています。今年は7か国語。詳しくは在外邦人による脱原発ネットワーク「よそものネット」のウェブサイトでご覧いただけます。

    https://yosomono-net.jimdofree.com/%E6%AD%A6%E8%97%A4%E9%A1%9E%E5%AD%90%E3%81%95%E3%82%93%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E3%83%A1%E3%83%83%E3%82%BB%E3%83%BC%E3%82%B8-7%E3%82%AB%E5%9B%BD%E8%AA%9E/