Freundeskreis Willy-Brandt-Hausでの写真展: Nuclear, Democracy and Beyond開催報告

[:ja]Freundeskreis Willy-Brandt-Hausで開催していました写真展「Nuclear, Democracy and Beyond. Photographs by Photographs by Ryûichi Hirokawa & Kenji Higuchi」は先週の日曜5月22日をもって当初の展示日程を終えましたが、引き続き6月12日まで会期を延期して同ギャラリーにて展示中です。

 

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展覧会フライヤー全面

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展覧会フライヤー裏面

展覧会のオープニングに先立って4月14日にオープニングセレモニーが開催されました。以下はオープニング当日模様の報告として両写真家へ書かれたメッセージです。

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フクシマ5周年チェルノブイリ30周年を機に、ベルリンの日本人反原発グループSayonara Nukes BerlinではProtestival – Nuclear, Democracy and Beyond というタイトルで311日から426日までの間に、「核エネルギーと民主主義」というテーマで一連のイベントを開催しました。フクシマもチェルノブイリもまだ過去のことではなく、今現在もすぐ世界のどこかで起き得る恐怖である。私たちはこの二つの原発事故の記念日に、いかに核技術・核エネルギーと民主主義が相容れないものであるか、これらの事故が今現在もどのような被害を与え続けているか、そして世界各地で行なわれている核技術をめぐる差別や人権を踏みにじる構造の実態に関し、改めてベルリンの市民と一緒に考えたいと、主として以下のイベントを企画しました。

  1. デモ(ベルリン市内)
  2. アート・音楽・パフォーマンスとパネルディスカッションによるフクシマ追悼Fukushima the Aftermath
  3. 映画上映会と監督トーク・「首相官邸前で」小熊英二監督、「太陽が落ちた日」アヤ・ドーメニク監督、「カリーナの林檎」今関あきよし監督
  4. 広河隆一氏と樋口健二氏の写真展「Nuclear, Democracy and Beyond – Willy-Brandt-Haus、オープニングセレモニー414日夜

写真展はその中でもハイライトイベントとして写真展チームが努力しました。写真展では、Sayonara Nukes Berlinから次のようなメッセージを挨拶として出しました。

Nuclear, Democracy and Beyond: Photographs by Ryûichi Hirokawa & Kenji Higuchi

チェルノブイリ30周年、フクシマ5周年 - 人間にとっては比較的長い時間かもしれませんが、放射能にとっては刹那ですらありません。これらの原発過酷事故が起きてしまったのには、私たち一人ひとりに責任があると意識しなければなりません。私たちは長い間、無知、無関心または怠惰から、世界中で400基以上もの原発が稼動するのを許してしまいました。これらの原発は日々どんどん死の灰を製造していますが、その放射能廃棄物を安全に隔離する場所はありません。政治と経済を牛耳る権力者たちがこれほど非民主主義的な原子力を「平和利用」だの二酸化炭素フリーのエネルギーだのと宣伝するのを受け入れてきてしまったことにも、「核の連鎖」の背後にいったいなにが行なわれているのかしっかり見ようとしてこなかったことにも責任があります。これほどまでに地球を汚し放射能まみれにして、負の遺産を子供たち、孫たちに残していかなければいけなくなったのは、私たちの責任なのです。

この二つの原発事故は過去の出来事ではありません。チェルノブイリとフクシマにより、人間は目に見えない放射線や、一度体内に入り込んでしまった時限爆弾から逃れることができないことがはっきりわかりました。被害者たちはそのような運命を決して自分で選んだわけではありません。彼らは誰も、自分のそれまでの人生から引き裂かれたのです、それも一度だけでなく今もずっと水、空気、食物、土に広がり続けている不気味で目に見えない「毒」によって、引き裂かれています。これは、誰をも無差別に襲ってしまう暴力にほかありません。一度捕えられると長い間逃れることのできない、それを耐え忍ぶことを強制される暴力です。ウラン採掘から始まって増え続ける放射能廃棄物、原発非正規労働者たちが高度な線量にさらされながら働く非人間的な労働条件に至るまで、原子力エネルギーのどこをとっても民主主義的価値と両立するものはありません。

原子力エネルギーに反対するベルリン在住日本人グループSayonara Nukes Berlinは、この二つの悲しい記念日に向け、どうしても問題提起をせずにはいられません。このような無責任なことは一刻も続けてはならないからです。私たちはそのために力を尽くし、自分たちの生や環境に対してなにかされるなら、それを決定する段階から口を挟んで参加していく所存です。もうすでに起きてしまった被害を少しでも抑えていくだけでも、大変な努力が必要です。広河隆一氏と樋口健二氏の写真を通じて私たちは、もう一度新たに自らに問いかけたいと思います。なぜこんなことが起きなければならなかったのか、そして私たちはそれを繰り返さないために、なにができるのか、ということを。

その後に、広河氏の写真を会場の左側、樋口氏の写真を会場の右側に展示しました。写真の前にはそれぞれのメッセージのドイツ語訳を展示し、写真家略歴は展示した写真の最後に展示しました。(以下、写真は主にSNBメンバーであり写真家の矢嶋宰)

会場での展示準備
キャプションや説明は透明のシートに印刷

バナーもオープニング当日完成
開場前にすでに見始める人々
ビュッフェにスタッフ手作りのお寿司

4月14日は夜7時半からオープニングセレモニーが行なわれました。Sayonara Nukes Berlinと写真展を共催してくれた報道写真・政治的写真展を主に展示することで有名なFreundeskreis Willy-Brandt-HausSayonara Nukes Berlinとがこのオープニングセレモニーを企画しました。招待状をたくさん配り、宣伝もしたものの、どれだけの人が訪れるか、始めてみないと分からない状態でしたが、7時過ぎにはかなりの人たちが入場し、だんだん会場が混んできたので、スタッフ一同喜びました。ほぼ二百名近く入場したと思われます。

Sayonara Nukes Berlinのメンバーでもあり、政治的批判・メッセージを込めたダンスパフォーマンスをするBodypoet Kazuma Glen Motomuraとソプラニスタ皆川卓志によるパフォーマンスでセレモニーが始まりました。Willy-Brandt-Hausのガラス張りの階段、踊り場およびエレベーターを駆使してガスマスクをつけたBodypoetが踊る間、卓志がキーボードで自作の音楽を弾き、最後は彼のカウンターテノールの高く澄んだ歌声が響く中で10分ほどのパフォーマンスが締めくくられましたが、開場の人たちは最後まで皆集中してパフォーマンスを見ていました。

集中してパフォーマンスに見入る観衆
ソプラニスタ皆川卓志とBodypoet Kazuma Glen Motomura

ソプラニスタ皆川卓志とBodypoetパフォーマンスの後、Freundeskreis Willy-Brandt-Haus の館長Gisela Kayser氏の挨拶、それに続いてSayonara Nukes Berlinを代表して梶川ゆう、IPPNW核戦争防止国際医師会議のメンバーでありチェルノブイリの子供を援助する基金でずっと仕事をしてきたDörte Seidentopf医師、Protestivalを全面的に支援しスポンサーとなってくれたGreenpeace EnergyのスポークスマンChristoph Rasch氏のスピーチで、オープニングセレモニーのプログラムは終了しましたが、会場に集まった人たちはワインを飲んだりビュッフェのスナックを食べながら写真を見たり互いに語り合ったりして、長くこのテーマをめぐり考えを新たにする場を提供することができたようです。スピーチでは、三人がそれぞれ原発をめぐる社会問題、原発事故の医学的影響、またヨーロッパにおける政治的問題などそれぞれ異なる点をテーマとして話したため、この写真展を機に包括的にあらゆる問題点を提起することができたと思います。

Freundeskreis Willy-Brandt-Haus 代表Gisela Kayser氏
Sayonara Nukes Berlinを代表して梶川ゆう
会場の様子
Greenpeace EnergyのChristoph Rasch氏

 

 

 

 

 

 

 

Sayonara Nukes Berlinを代表して私は、最初にノーベル文学賞作家スヴェトラーナ・アレクシエーヴィッチの「チェルノブイリの祈り」から文章を引用したあと、ベルリンとその近郊に住む 日本人である私たちが フクシマ後なにかをせずにはいられずにまず小さなデモから反核運動を始めたことを説明し、フクシマ5周年、チェルノブイリ30周年という今年は、それを機にベ ルリンの市民に核エネルギー と民主主義という相容れない 二つ改め考え直すきっけかと なるイベントを作りたいと企 画したことを話しました。

フ クシマとチェルノブイリの 悲劇が過去のものでも遠い国 のものでもなく、世界のどこで おきてもおかしくないという いうこと、いということ、脱原発を決めたドイツでもまだ 8基の原子炉が稼動しており、 原子力エネルギーを推進する 国々に囲まれていること、 そして世界中で、どこにも安 全に貯蔵する場所のない死の灰が毎日つくられていること を思い起こすと同時に、最悪 事故が起きなくとも、樋口健 二氏の写真が示すように、原 発労働者がいかに非人間的な 労働条件で被ばくを強いられ 使い捨てされているかを考え れば、原子力エネルギーのど の点をとっても民主主義的価 値や人権とは相容れないもの であるか、責任の取れないも のであるが分かる、フクシマ とチェルノブイリが起きてし まったことは変えられないが、 決して繰り返してはならない こと、これ以上地球を放射能 で汚し、負の遺産を子供たち に残してはいけないことを訴 ました。

また、最後に左の広河氏の写真で沖縄「球美の里」で 保養をする子供たちのプロジェ ェクトを紹介し、寄付金を募 りました。ここで集めた寄付 金は、Sayonara Nukes Berlinのメンバーであり、このプロジェクトのためのチャリティーコンサートを開いて募った寄付金と一緒に、ドルトムント独日協会、慈善国際団体カリタスを通じて広河さんが中心となって設立された福島の子供たちのための保養施設NPO法人「沖縄・球美の里」に送らせていただくことになりました。

また、まだ正式に決定されていませんが、ドイツ連邦環境省がこのProtestivalに関心を寄せ、ことに写真展に強い興味を示しており、9月から2日間かけて環境省主催で行なわれる環境イベントの会場に、この写真展をそのまま持っていきたいという要望が出ています。これに関しては、正式に発表になり次第、お伝えしたいと思います。環境省の広報担当の方と話した時点では、チェルノブイリもフクシマも忘れられかけている現在、この二つをしっかりテーマとして取り上げていることは大切なことで、それを応援したい。また、我々が主催する環境イベント の会場は広いので、そこにこの写真展の写真全40点とキャプション、写真家のメッセージをぜひ展示したい、という意向を伝えてくれました。

 

 

 

 

 

また、写真展会場の共同主催者Freundeskreis Willy-Brandt-Hausからは、この写真展は522日まで開催の予定だったが、その開催期間を延長しようかと考えている、との話が入っており、この写真展が好評で、多くの人たちが見に訪れていることを示しています。

小さいグループで企画した写真展でしたが、広河・樋口両氏の賛同を得て説得力ある写真データを使わせていただき、メッセージも寄せていただき、ありがとうございました。フクシマ5周年・チェルノブイリ30周年を機に、写真を通じてもう一度この二つの事故に思いを馳せ、市民に改めて核エネルギーの非民主主義的あり方を考えてもらうことができたのは、とても有意義なことだったと思います。オープニングセレモニーのあった414日はまた、熊本で大地震が起きた日でした。意固地とばかり川内原発を止めない日本政府を始めとする対応に、改めて背筋が寒くなる思いがしました。

今年のProtestivalは、この写真展開催を最後のハイライトに終了しましたが、放射能は私たちよりずっと長くあり続けることを思うと、運動はこれからもずっと持続していかなければなりません。来年はフクシマ6年、チェルノブイリ31年となお人々を動員するのが難しくなるかもしれませんが、ベルリンでも私たちのできる範囲で、納得できる草の根の運動を続けていきたいと思っています。樋口さんと広河さんという日本での反核運動の歴史を語るときに欠かすことのできないお二人の作品や運動に勇気をいただき、これからも努力していきたいと思います。

樋口さん、広河さん、今回は全面的なご協力に心からお礼を申し上げます。そして、今後もお元気でご活躍なさることを、Sayonara Nukes Berlin一同遠くから祈っております。本当にありがとうございました。

報告:梶川ゆう

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