セシウムに汚染されたブルーベリージャム

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こんにちは。Sayonara Nukes Berlinで主にドイツ(語)関係のことを受け持っているKIKIです。

まずは、2日の環境フェスティバルと3日の勉強会に協力して下さった方、参加してくださった方、本当にありがとうございました。
このホームページ上でもコラムという形で、私たちの活動と関わるテーマについてお知らせしていきたいと思います。気長におつきあいください。

第1回目は、フェスティバルでも勉強会でも反響の大きかった、ブルーベルージャムについて。

「ヨーロッパで出回っているブルーベリージャムはセシウムに汚染されている」

このことを話すと、ドイツ人の大半はびっくりします。年配の方だと、「ああ、知ってるわよ」みたいな反応が時々あるのですが、それでも詳細を話すと「うわ・・・」というリアクション。なぜヨーロッパのブルーベリージャムが危ないのか、順番にお話しましょう。

まず、汚染の原因ですが、これはフクシマの影響はありません。ヨーロッパで放射能汚染といえば・・・そう、チェルノブイリ原発事故です。27年前の事故で広がった放射性物質が、今でも食べ物から検出されるのです。事故の直後に風で放射性物質が飛んでいったところ、雨が降ったところでは、それによって土壌が汚染されました。チェルノブイリから近い東欧諸国や、南ドイツでは、今でも、森で取れるキノコやベリー類や野生動物の肉などから高い放射線数値が観測されるそうです。

ジャムになるブルーベリーというのは、生食用のものとは種類が違って、根っこの浅い、背の低い木から取れます。汚染された表土から放射性物質を吸い上げてしまうので、他の果物に比べて汚染の度合いが高くなるそうです。

なぜその汚染がチェルノブイリの影響だと分かるのでしょう?それは、ブルーベリーから検出される放射性セシウムが、セシウム137だけだからです。原発事故で放出される放射性セシウムには134と137があります。セシウム134の半減期は約2年なので、20年もすれはほとんど消えてしまいます。一方のセシウム137の半減期は約30年。27年前のチェルノブイリで放出されたセシウム137はまだ残っているのです。このことから、セシウム137だけが測定される汚染は、最近の出来事によるものではないということがわかります。

過去の話のように思われるチェルノブイリですが、その負の遺産がヨーロッパでまだ身近なところにあるといういい例が、このブルーベリージャムの汚染です。
ヨーロッパの日常生活から忘れられていたチェルノブイリの影響が「再発見」されたのは、フクシマ後に新たに日本で作られた安全基準に拠るところが大きいようです。日本の輸入制限値は、チェルノブイリ後には370ベクレル/キロに設定されていたのですが、2012年4月に一般食品の制限値が100ベクレル/キロに下げられたことにより、今まで表面化しなかったヨーロッパからの輸入品の汚染が注目されるようになりました。
今年3月の横浜の市民団体の計測によると、ドイツの普通のスーパーでよく見かける、北ドイツの有名ジャムメーカーのブルーベリージャムから約22ベクレル/キロのセシウム137が検出されました。その後、スイスで行われた測定では、調べたブルーベリージャム12種類(ドイツ、フランス、スイス、オーストリア、イタリア、イギリスで製造)のすべてからセシウム137が検出されました。汚染の度合いは、ブルーベリーの産地によるようで、東欧産のものを使っているジャムからは軒並み高い汚染が見つかりました。
皮肉なことに、最もひどく汚染されていた(133ベクレル/キロ)のは、ウクライナ産のブルーベリーを使っていたドイツのビオ製品でした。積極的にビオを買っている私としては、これはショックだったんですが、ビオだからすべての面で安心、というわけではないのですね。

ちなみに、133ベクレル/キロのジャムは、現在の日本では売れません。実際に、制限値を引き下げてから、フランス製やオーストリア製のブルーベリージャム5種類が厚生労働省の輸入品の調査で引っかかっています。
ところが、ヨーロッパの制限値はなんと600ベクレル/キロ。日本では販売できないものでも、ヨーロッパでは何の問題もないことになります。オフィシャルにそうなっている以上、売る側としては「制限値を上回らなければ問題ない」という言い訳ができます。今回の検査をしたスイスの団体によると、最も高いセシウム値が検出されたビオメーカーは、念のためということで、同じチャージの商品を回収したそうですが、それでも「健康に悪影響を及ぼすということではない」と説明しています。もし今ヨーロッパで制限値を日本並みに引き下げたら、売れなくなる商品が結構出てくるのかもしれませんね。

ジャムなんて大量に食べるものではないし・・・と考えたいところですが、毎日パンに塗ったり、ヨーグルトに入れて食べたりしていたら、長い目で見れば結構な消費量になります。ドイツなら、ジャム以外にも、ブルーベリーの入ったシリアルやパンやお菓子やヨーグルトがたくさんあります。そういえば、あんなものにも、こんなものにも入っていたな・・・、子供にも食べさせたな・・・、と思うと、もっと早く知っておきたかったと思わざるをえません。
中には、目にいいということで、積極的にブルーベリージャムやサプリメントを取っている人もいることでしょう。アントシアニンは目にいいかもしれないけれど、セシウム137で健康を害したら本末転倒。何が体に良くて、何が体に悪いのか。なんとも難しい問題です。

それでもやっぱりブルーベリー製品を食べたい!という人は、産地を確認するといいそうです。チェルノブイリのフォールアウトの影響を受けていない土地で作られたものを使っていれば、汚染の確率は低くなります。しかし、ジャムに限らず加工品の場合は、材料の原産地まで詳細に書いてあるとは限らないので、製造元に問い合わせるとか、自分で情報を探すしかありません。
ブルーベリーに比べると、他のベリー類の汚染は低いそうなので、そういったもので代用するのも手ではあります。
ただ、いろんなベリー類が混ざったジャムだと、そこに汚染度の高いブルーベリーが含まれていれば、当然のことながら全体として汚染の数値は上がります。ちなみに、例の133ベクレル/キロのブルーベリーを作っていた某ビオ会社がオーストリアで売っていたベリーミックスのジャムからは、53ベクレル/キロのセシウム137が検出されています。

ここまでみてみると、どのくらいの数値までなら安全なのか?というのは非常に難しい問いだということがわかります。そもそも、食べ物からセシウムが見つかること自体すでに問題なわけで、何ベクレルまでなら安全、というのは消費者が将来的にそれで健康を害することを想定しているようなものです。
たとえ低い値であっても、汚染されたものを頻繁に食べたり、大量に食べたりすれば、結果的には深刻な健康被害をもたらすかもしれないし、放射線の感受性の高い子供や胎児にとっての影響は大きいかもしれません。汚染は低ければ低い方がいい、無いのが一番、という原則からすれば、私たち消費者は制限値に関係なく、食品の安全性についてもっとシビアでなければいけないでしょう。(文責:KIKI)

参考
・Strahlentelex Nr. 630-631; 4. April 2013; S.1-2
・Strahlentelex Nr. 632-633; 2. Mai 2013; S.1
・Gesundheitstipp April 2013; S. 16-17; http://www.gesundheitstipp.ch/themen/beitrag/1083339/Das_strahlende_Erbe_von_Tschernobyl_
・YCRMS測定員の部屋(横浜市民測定所の測定員のスタッフブログ) 「ドイツ産*ブルーベリージャム」 2013年3月15日http://ycrms.blog.fc2.com/blog-entry-45.html[:en][:de][:]

「セシウムに汚染されたブルーベリージャム」への2件のフィードバック

  1. 佐藤隆生

    こんにちは。
    私はオーストラアリアからジャム等を輸入しております。
    ブルーベリーに関してですが、やはりそうだったんですね。
    というのも、弊社でブルーベリージャムを欠品した際必ず  税関、農水省で聞かれるのがブルーベリーの産地です。
    担当者曰く東欧のブルーベリーを原料として作った場場合は輸入禁止だと言っていました。
    日本では伊藤忠商事がサンダルフォーのブルーベリージャムを輸入していますが大丈夫なんですかね?

    1. 佐藤さん、コメントをお寄せくださいまして、ありがとうございます。サンダルフォーはこの時の調査では名前が挙がっていません。日独のHPを確認したところ、ジャムの産地までを確認することができませんでしたが、野生のブルーベリーを使用していることは明記されています。この野生のブルーベリーについては、ベルリンの放射線防護協会で長年活躍された専門家からも気を付けるように言われていました。企業に直接お問い合わせになってみてはいかがでしょうか。各地の市民測定所では、測定量をご負担になるか、食材の持ち込みを受け付けているところもあるかと思います。この記事の後では、IKEAのブルーベリーを使用した食品からも高い数値が出たことがあり、ドイツでは回収はせず、顧客の自主判断という形で販売されてはいました。ロッコより

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